【トラック全日本選手権2019】チームパシュートにてブリヂストン日本新記録樹立

トラック全日本選手権2019/チームパシュート/ブリヂストン日本新記録 3:57.488


レース名:第88回全日本自転車競技選手権大会トラックレース
開催日:2019年9月14日(土)〜16日(月・祝)
開催地:静岡県・JKA250
TEAM BRIDGESTONE Cycling参加選手:
今村駿介、窪木一茂、沢田桂太郎、近谷涼、橋本英也

photo:Midori SHIMIZU


2019年9月16日に行われたトラック全日本選手権最終日、東京2020オリンピックの競技である4kmチームパシュートにて、TEAM BRIDGESTONE Cyclingは日本記録を更新、3分57秒488という新たな記録を打ち立て、優勝しました。



(近谷、橋本、今村、窪木、沢田)


2019トラック全日本選手権の最終日、TEAM BRIDGESTONE Cyclingの出場種目はチームパシュートのみ。

東京2020オリンピック種目であるこの種目で、チームブリヂストンは一つの目的をもっていました。それは4kmチームパシュートにて日本新記録を出すこと。願わくば3分55秒を切る、というものでした。

4kmチームパシュートこれまでの日本記録は、マレーシアで記録された3分57秒801。この記録を更新することで、1ヶ月後に迫った韓国でのアジア選手権での勝利とUCIポイント獲得につなげること。ひいてはトラックオリンピックポイントを獲得してランキング上位8カ国に入り、東京2020オリンピック出場枠を確定させたいという想いです。



(沢田、窪木)


チームは綿密なミーティングを重ね、出場選手や戦略を決めました。まずは1チームずつが走るタイムトライアル方式の予選で、タイムを狙うこと。

そのために予選のチームメンバーとなる4人は、沢田・窪木、橋本、近谷。理由は1kmTT優勝の沢田の爆発的なスプリント力で全体の速度を引き上げ、残りの3名がその速度を保ち理想のタイムを出す、との戦略から。

チームパシュートとして4人で走る練習は、先の3月、トラックシーズンを終えてからはほとんど行っていないチーム員。この4人メンバーでの走りはほとんど経験がありません。

レース当日の朝、誰も走っていない練習時間のタイミングに、今シーズン初めてフォーメーションを組めました。



(沢田、橋本、窪木、近谷)


「実際も合わせもしていないし、ぶっつけ本番で不安はありました。

でも、全員の共通した意識の中で『日本記録を出す』という考え、3分55秒を切ろうというはっきりとした意志があったので、そのためにするべきこと、決められたこともシンプルでした。

僕はまず1と3/4周を引いて、もう一度1周半を全開で引き切ること」(沢田)

全日本選手権という舞台ではありますが、チームブリヂストンが目指すのは、出したことのないタイム、走ったことのない速度域。

経験のない領域へと挑むためにチーム員は全員、55x13tというこれまでない大きなギア比を選びます。



(近谷、窪木、橋本、沢田)


そして予選がスタート。見た目は順調に走っていますが、周回のタイムを聞いていると、後半に落ちてきたのがわかりました。

「前半は良かったんですが、後半のペースが一回落ちてしまって。重いギアを掛けているので、ペースが一度落ちると戻すのがきつくて」(橋本)

「個人的には昨日からイメージをしていて、万全の態勢で臨んだつもりでした。序盤の入りとか、走るタイムはいいペースで走れていて。このまま行けば僕らの理想のタイムが出る予定だったんですが、残り5周ぐらいからタイムが落ちてしまって」(近谷)



結果は3分57秒893。日本記録には0.1秒ほど及ばないタイムでした。昨年の全日本選手権で、メンバーこそ1名異なりましたがチームブリヂストンの優勝タイムは4分02秒646だったので大きな躍進ではあります。周囲はこのタイムを褒めてはくれますが、選手たちは煮え切らない気分です。

「初めての合わせで、ギアも掛けて、みんなが一つになって挑戦という感じの走りだったなかでのこのタイム。日本記録には少し及ばなかったけど、それでも0.01秒差。強化合宿のあとのレースでもない中で、ベストを尽くせたと思います」(窪木)



(橋本、沢田、窪木)


*予選結果
1 TEAM BRIDGESTONE Cycling 3:57.893 (大会新)
 (沢田桂太郎、窪木一茂、橋本英也、近谷涼)
2 日本大学 4:15.725
 (兒島直樹、貝原亮太、中山駿、高橋舜)
3 岐阜県 4:22.025
 (棚瀬義大、日比野丈、永田吏玖、三島陸斗)



この午前10時の予選のあと、決勝までは4時間ほどあります。決勝には対戦相手がいるため、新記録達成のためには、あるいは相手を追い抜いてさらに走り続ける必要があります。条件は予選よりも厳しく、選手とチームスタッフの間に、あらゆる意味での緊張感が漂います。

そして決勝です。出走メンバーは、一走・窪木に続き、橋本、今村、近谷。その戦略は「4名全員がパシュートが得意なので、窪木が先頭を3度走り、あがったペースを3人が落とさない」こと。



(窪木、橋本、今村、近谷)


個人追い抜きで圧倒的な速さを見せた窪木、牽引力という意味では現在、名実ともに日本一の出力を誇るエンジンです。その窪木が3度先頭を引き、1周回を14秒台前半で走り続けます。

途中、対戦相手の日本大学をスムーズに追い抜きます。通常のチームパシュートのルールでは、対戦相手に追いついた時点で終了ですが、タイム更新を狙うことを宣言しているため、そのまま走り続けます。



結果からお伝えすると、チームのタイムは3分57秒488。日本記録を0.3秒ほど更新することに成功しました。言うまでもなく全日本選手権は優勝です。

その模様、4分弱の走りを下記Youtubeアーカイブから、ぜひご覧ください。



窪木と橋本はこの走りを振り返り、冷静に今後の伸びしろを予測しています。

「僕はこれまで、日本記録を更新したメンバーで走れていなかったので。予選を走る前は不安というか、どうなんだろうと思ったんですが。走ってみたら『あ、これは大丈夫』だと思って、決勝はかなりリラックスして走れました。この感じなら、54秒更新もできないことじゃないかなと思いますけどね」(橋本)



(橋本、窪木)


「今持てる力はみんな出したと思います。予選と決勝、2回走って57秒台というタイムだったから、これは今の力。ただ(走りを)合わせてトレーニングして取り組めば、絶対2秒ぐらいはすぐ縮められると思います。そうすればアジア記録を持つ韓国には並ぶんです。(チームパシュートの)五輪出場枠の国別ランキングの最低枠8位を、まずは目標にできる。

そのためにも、来月のアジア選手権では優勝して、ワールドカップにつなげていくべきだと思います」(窪木)



(今村)


その一方で今村は記録更新の喜びよりも、自身が最高のコンディションでなかったことを率直に伝えました。

「(自分が)もっとフレッシュかと思っていたんですがキツく、ペースを落としてしまった部分もあり、記録が伸びなかったんじゃないかと思います。

8月ぐらいからあまり練習がしっかり詰めず、レースも続いて苦しかったのですが、なんとか今日まで持って来れて、今日はチームの助けと気持ちで持ったという感じでした。

最低限ではありましたが、記録を更新できたのはいいと思います」(今村)



(今村、近谷)


そして近谷は、苦しさを超えてタイムを更新すると周りの人に喜んでもらえる、その高揚感を求め走っていることを再認識したと伝えました。

「昨シーズン、3月のトラック世界選のあとから伸び悩み、何が正しいんだって考え、苦しんで。ロードレースもして、食事、練習、コンディショニングを考えて、考えてもらって、ここまでやってきて、タイムが出て、サポートしてくれたみんなが喜んでくれた。

『このためにやってきたんだな』って率直にそう思いました。この喜びって、毎回一瞬なんですけれども、これを味わうためには努力や過程が大事。みんなの期待、応援とサポートに応えたい、そのために僕たちもタイムが出したい、その想いで走りました。ワクワク感と重圧がいっしょにあって。それで走って、喜びがあって。本当にいろんな感情をペダルに込めて走りました。そこが一番だと思います」(近谷)


まずは、目標を着実に達成したTEAM BRIDGESTONE Cycling。大きな目標である東京2020オリンピックでのチームパシュート出場枠を獲得するために、着実に目標を達成し続けていくことが必要です。


今回の全日本選手権では、昨年からチーム員の実力が上がっていることをタイムとして実証できました。選手それぞれのフィジカル面は明らかに向上しており、そして先月から投入されたブリヂストン アンカーの新機材(中距離トラックフレーム、エアロハンドルなど)の性能も、その実現を手助けしています。

来る2019−2020トラックシーズン、先に待つアジア戦、ワールドカップ、そして世界選へ。チームブリヂストン選手たちは昨シーズンよりも格段にその力を上げ、世界へ挑戦する準備を整えました。

【リザルト】チームパシュート 決勝
1 TEAM BRIDGESTONE Cycling 3:57.488(日本新)
 (近谷 涼、窪木 一茂、今村 駿介、橋本英也)
2 日本大学 OVT
 (兒島直樹、治田知也、中山駿、高橋舜)
3 岐阜県 4:18.586
 (棚瀬義大、日比野丈、永田吏玖、三嶋陸斗)


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