W杯直前! 飯島誠のトラックレース総ざらい 【Vol.3 オムニアム】
ワールドカップ第1戦では、さっそく各種目で有力選手が火花を散らし、激しいレースが繰り広げられました。
間髪入れずに今週末は第2戦が開催されます。東京2020オリンピックの出場枠を獲得するための重要なレースが続くなか、オリンピックに採用されている6つのトラック種目の見どころやルールを三度のオリンピック、トラックレースへの出場経験がある飯島誠が紹介します。
第3回は複数種目で競われる「オムニアム」です。
前回大会から種目構成が変更
日本人が得意なゲーム系レース
オムニアムは前回のリオ2016オリンピックより種目構成が変更となりました。6種目から4種目へと種目数が減り、すべてゲーム系※のレースとなり、1日に4種目を実施し、順位を競います。種目順は以下のとおりです。
- スクラッチ(男子10km、女子7.5km)
- テンポレース(男子10km、女子7.5km)
- エリミネーション
- ポイントレース(男子25km、女子20km)
この変更は、ゲーム系種目を得意としている選手が多い日本とっては嬉しい変更といえるでしょう。とくに新たにテンポレースが加わったことは、以前よりトレーニングの一環としてテンポレースを取り入れていた日本代表チームには、プラスの面が大きいです。
オムニアムでは、1~3種目までは順位に応じた得点が各選手に与えられ、その総得点とポイントレースでの点数を合わせて順位を決定します。全体的にどの種目も距離が短く、近年はレースの高速化が進んでいます。そのなかで、戦局を見極める冷戦な判断が求められます。やはり、選手によって得意不得意があるので、各種目ごとの展開だけでなく、オムニアム全体を通しての流れを考えなければ勝つことはできません。
時にはその種目の1位を捨てて、4~5位あたりでうまくまとめるといった選択しなければならないことも多々あります。1位を狙いすぎて、下位の順位を取ってしまうと、その時点で表彰台が一気に遠のいてしまうからです。
※ゲーム系種目 ⇒ 複数選手で競われ、相手に勝つために戦略が重要となる種目
ロードレースを濃縮したような
目まぐるしく変わるレース展開
スクラッチ
ここからは各種目のルールとその見どころを紹介していきます。
まず、第1種目の「スクラッチ」。一斉にスタートし、ゴール着順がそのまま順位となる種目なので、4種目のなかでは最もルールがシンプルです。そのぶん全体的に速いレース展開が繰り広げられます。とくに残り5周を切るとペースは落ちません。そのときにいかに良い位置にいられるかが、重要なポイントです。集団後方にいてしまうと、もう追い上げは厳しいです。
1種目目なので、どの選手も下の順位を取らないように積極的に動いていきます。
テンポレース
第2種目の「テンポレース」は、5周目以降、毎周回1位通過の選手に1点が与えれます。また、主集団を周回遅れにした場合には、20点を獲得でき、レース終了時のポイント合計で順位を決定します。前述のとおり新種目で、全体的にもっとも高速化が進んでいるレースです。そのなかでも速度が落ちる瞬間があるので、そこでどう集団から抜け出せるかがカギとなります。ポイントレースと異なり、1位にしかポイントが与えられないため、そのルールを理解してうまく得点を重ねる必要があります。
周回遅れを狙って飛び出す選手も多く、目まぐるしく展開が変わる点も見どころです。周回遅れが発生すると、どこが先頭なのか分かりにくくなってしまいますが、ホームストレッチの審判が必ずどの選手が先頭かを指さしてくれますので、観戦する際は参考にしてみてください。
エリミネーション
第3種目の「エリミネーション」は、2周ごとに最後尾の選手が除外されていき、最後の一人になるまでレースが行われます。観ていて分かりやすく、子どもたちにも人気な種目です。
ビリにさえならなければ、除外されないので、内側の選手に蓋をして、集団から出られないようにするなど、いろいろな手が使われます。除外選手はゴールラインで判断されますが、駆け引きはその1周回前から始まっていたりするので、目が離せません。空間把握能力が求められるレースといえるでしょう。エリミネーションをとくに得意としている選手がいますので、そういった選手の動きを見ていると非常に面白いです。全体を見るのではなく、強い選手1,2名に絞ってレースを見ると、目から鱗な種目です。
ポイントレース
そして最終種目が、「ポイントレース」。エリミネーションまでは、順位に応じた得点が与えられますが、ポイントレースだけは、レース中に獲得した点数がそのまま順位として反映されます。言ってしまえば、3種目終了までビリだったとしても、ポイントレースで大量得点できれば、大逆転も起こり得る種目です。
指定の周回数の着順で1位5点、2位3点、3位2点、4位1点が与えられ、ゴール時には、その倍の点数が獲得できます。また、テンポレースと同様に主集団を周回遅れにすると20点も獲得できます。上位勢はけん制し合うこともあり、中盤順位の選手が一発逆転の表彰台をかけてギャンブル的な動きしてくる可能性も大です。ライバルとなる選手の持ち点を考えながらの駆け引きは非常に見ごたえがあります。大きなレースでは、電光掲示板に順位が出ているので、その順位を参考にしながら観戦すると各選手の思惑なども分かり、より楽しめるはずです。
さて、本日(11/8)より開催中のワールドカップ第2戦では、TEAM BRIDGESTONE Cyclingの若手有望株である、今村駿介と機材サポート選手で、女子中距離トラックチームのエース、梶原悠未選手がオムニアムに出場します。ぜひ、彼らの活躍にご注目ください。
< 今後のトラックレース開催スケジュール >
2019年
11/8~11/10 トラックワールドカップ第2戦 イギリス・グラスゴー
※TEAM BRIDGESTONE Cycling 出場予定
11/9 女子ケイリン・ 太田りゆ/女子オムニアム・梶原悠未
11/10 男子オムニアム・今村駿介/女子スプリント・太田りゆ
11/29~12/1 トラックワールドカップ第3戦 香港
12/6~12/8 トラックワールドカップ第4戦 ニュージーランド・ケンブリッジ
12/13~12/15 トラックワールドカップ第5戦 オーストラリア・ブリスベン
2020年
2/26~3/1 世界選手権大会自転車競技トラック種目 ドイツ・ベルリン
◆先日開催されたトラックワールドカップ第1戦(ベラルーシ・ミンスク)のレポートは以下よりご確認ください。
「第1戦ミンスク大会 女子スプリント/太田23位」 ⇒ https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2019/11/191102-TRK-WC1-Sprint.html
「第1戦ミンスク大会 女子ケイリン/太田10位に」⇒ https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2019/11/191103-TRK-WC1-Keirin.html
(写真/播本明彦、小暮 誠)
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