W杯開催中! 飯島誠のトラックレース総ざらい 【最終回 チームパシュート】
東京2020オリンピックに採用されている自転車競技トラックの6種目の魅力を、オリンピアン飯島誠が紹介していく集中連載も今回で最後。ラストを飾るのは、「チームパシュート」です。
東京2020オリンピック出場を目指し、今週末のトラックワールドカップ第三戦・香港大会にて、いよいよ男子チームパシュートチームが、今季ワールドカップに初出場します。
4人の力を合わせて
4kmを走り切る
チームパシュートは、4km(250mバンクの場合は16周)のタイムで競われます。予選は各チームの単走によるタイムアタックですが、順位が決する決勝シリーズ(1回戦および順位決定戦)は2チームがホーム側とバック側に分かれて、スタートし、相手チームを追い抜くか、フィニッシュタイムで勝敗を決します。ちなみにフィニッシュタイムは、3番目の選手の通過タイムが適用されます。
交代の回数やタイミングは、とくにルールとして規定されていないため、チームとしての戦術が問われる部分です。
私が現役の10年前と比べると、交代の回数を減らす傾向になってきています。1人が1回あたりに先頭を走る距離を長くした方が、効率が良いことが分かってきたからです。現在はだいたい1.5周から2周ごとに先頭交代するチームが多いようです。
選手の走順に関しては、1走はゼロスタートからトップスピードに隊列を押し上げていくことが求められるので、スピードと馬力のある選手が選ばれます。2走も脚質的には1走に近く、トップスピードが速い選手が務めます。3,4走になると少し長めの距離を高速で巡行できる能力が必要になってきます。
日本チームだと、1走を沢田(または窪木)、2走を窪木(または橋本)、3,4走を橋本、近谷や今村といったオーダーを組みます。3番手のフィニッシュタイムで競われるので、負担の大きい1走の選手はラスト1kmほどで隊列から離脱するケースが多いです。
バンクの特性を見抜き
戦術に落とし込む
同じ250mといっても、直線の距離やコーナーのカント(傾斜)、路面抵抗など、各競技場によって特性が異なるため、数少ない試走のタイミングで、特性を把握しなければなりません。試走で得た情報によって、チームは交代のタイミングなどを微調整していきます。
また、隊列を組んで走ったり、交代の方法も、重要な技術です。交代する際は、先頭の選手がコーナーで外側に大きく離脱し、隊列の最後尾につきます。この動き方がもっとも体力を消耗せずに隊列に復帰するやり方です。ダラダラと離脱すると無駄に耐力を消耗してしますし、一度大きく外側に離れることで、復帰の際にコーナーの傾斜を利用し、楽に隊列に戻ることができます。
フィニッシュ時もフォーメーションが決まっており、3番手の選手がゴールに飛び込みやすいように、1番手と2番手の選手はラストの直線に入ると徐々に外側へと開いていき、最短ルートを3番手に譲ります。
対戦競技ではありますが、相手チームを気にしてしまうと隊列が崩れてしまうので、選手たちはつねに集中して自分達のベストタイムを出すことだけに集中しています。1つのゴールに向かい4人が一丸となり、ひたむきにペダルをこぎ続ける姿をぜひ楽しんでください。
< 今後のトラックレース国際大会開催スケジュール >
2019年
11/29~12/1 トラックワールドカップ第3戦 香港
※第3戦のチームブリヂストンサイクリング出場選手が決定しました。
男子チームパシュート(窪木、近谷、沢田、今村)
男子オムニアム(窪木、今村)
男子マディソン(窪木、今村 ※リザーブ 近谷)
男子スクラッチ(沢田)
女子ケイリン(太田)
女子スプリント(太田)
12/6~12/8 トラックワールドカップ第4戦 ニュージーランド・ケンブリッジ
12/13~12/15 トラックワールドカップ第5戦 オーストラリア・ブリスベン
2020年
2/26~3/1 世界選手権大会自転車競技トラック種目 ドイツ・ベルリン
<レースレポート>
トラックワールドカップ第1戦(ベラルーシ・ミンスク)
「女子スプリント/太田23位」 ⇒ https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2019/11/191102-TRK-WC1-Sprint.html
「女子ケイリン/太田10位に」⇒ https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2019/11/191103-TRK-WC1-Keirin.html
トラックワールドカップ第2戦 イギリス・グラスゴー
「太田と今村が善戦」⇒ https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/2019/11/191110-trkwc2.html
(写真/小暮 誠)
最新記事
Article