MTB2019最終レース、過酷な状況下で沢田4位、平野が5位に【アジアMTBシリーズ最終戦マレーシアUCI-C2】

MTB2019最終レースで沢田4位、平野が5位に【アジアMTBシリーズ最終戦マレーシアUCI-C2】


レース名:Asia MTB series final Kota Kinabalu UCI-C2
開催日:2019年12月15日
開催地:マレーシア・コタキナバル
TEAM BRIDGESTONE Cycling参加選手;沢田時、平野星矢

2019年12月15日、マレーシアでのUCI-C2 MTBレースに参戦したTEAM BRIDGESTONE Cyclingの沢田時と平野星矢。過酷な状況に、それぞれがトラブルを抱えた厳しいレースとなりましたが、沢田は4位に、平野は5位に入りました。小林MTB監督のレポートです。

-------------------------

12月のマレーシア・コタキナバル。ここでTEAM BRIDGESTONE Cycling MTBの2019シーズン最終UCIレースが行われた。同時にこのレースはアジアMTBシリーズファイナルとなっており、日本を含むアジア各国から多くの選手が参加。

結果、沢田選手が先頭を追走中に酷泥によるホイールトラブルを起こしながら粘っての4位、平野選手は絶好調で会場入りしたものの直前の足のケガ、落車で本領発揮できず5位でフィニッシュした。
チーム目標であったファイナルレースのワンツーフィニッシュが叶わなかったことはとても悔しい。一方、この長いシーズンをチーム一丸で戦い抜いたこと、ファイナルレースを終えて無事に帰国できることに安堵している。


2019シーズンはチームにとっても選手にとっても非常に重要なレースが続いた。2月からUCI欧州遠征をスタートし、全日本選手権とアジア選手権を挟んで24大会、45日のレース日を数えた。それも闇雲にレースを拾ってきた訳ではない。トレーニングレース、コンディショニングレース、UCIポイント獲得のためのレース、招待レース、日本代表レース。チーム全員の情熱と生活が完全にマッチしていないと成立しない。そしてスポンサー、サプライヤー、ファンの後押しが大きい。日本人として、最も多くのUCIレースデイを戦い抜けたのは各位の大きな支援があってこそ。心から感謝したい。

コタキナバルは雨季。毎日どこかの時間で必ず雨が降る。最高気温は30度を超え、12月の日本から来ると非常に蒸し暑い。美しいサバの海と4000m超のキナバル山で有名なここは年間を通じて世界中から観光客が来ている。ホテル裏でメカニック作業しているとストローハットに真っ白い短パンのアメリカ人、オーストラリア人などのゲストが積極的に声をかけてくる。
「I know Bridgestone. I will support you to participate in Tokyo 2020 Olympics. 」(ブリヂストンは知っています。東京2020オリンピックに出られるよう、あなたを応援しますよ)
この僅かな時間、短い言葉にどれだけ勇気をもらったろうと激しいシーズンを思い返す。


レース当日は天気予報より早めの雨。雲行きからまず晴れないことがわかる。レース中に晴れてしまうと泥をこねてしまうため、このまま降り続くことがいい。チームは3日間かけて4種類のタイヤを入念にテストしてきた。なのでタイヤ選択に迷いはない。

コースは1周2㎞を11周回。海岸砂の混じった粘土質という厄介な土壌。沼池周りの泥溜り、奇形で滑りやすい岩場、急激で無理やりな登坂と連続する流れの悪いタイトコーナー。コーステープも曖昧でショートカットしてしまいそうだ。この環境で天気は雨。間違いなくラップアウト(周回遅れ)が多発する。しかもエリートの2分後にジュニアがスタートする、コース内で抜くことになればタイムを落とす原因になるのは目に見えている。パックよりも単独で抜け出ること、スタートを先頭で迎えることが圧倒的に有利になるだろうと考えていた。


11:25AMスタート。定刻より5分早い号砲。バナナの葉に当たる雨音が聞こえるほどの降雨の中、30名程のエリートが一斉にスタート。チーム2選手は5番手、7番手で最初の登坂に入った。
この2㎞コースは抜き所がとても少ない。スタートで前にいないと勝負にならないことは誰でも理解しているから、幅員が減少するギリギリまで選手が肩を当て合う。この日、勝つことになる山本幸平選手(Dream Seeker MTB Racing Team)を先頭に、オーストラリア、カザフスタンの選手がロケットスタートに成功。チーム2選手は少々出遅れた格好で熱帯雨林に入っていった。

レースの序盤はかなりのハイペース。先頭から12秒程に沢田選手、18秒程に平野選手。やはり先頭に立つ選手が自分のラインでペースを刻み、アイウェアにライバルの泥を被ることなくレースを進めていく。



3名による2番手パックになった沢田選手は抜け出ようと懸命にプッシュするが前後の選手との緊張した動線に埋もれてペースは中々上がらない。
平野選手は苦手な泥とケガの影響なのか精彩さに欠けていた。それでも前にいるライダーとの差を広げないよう集中してラップを重ねていった。

中盤。沢田選手のいる3名パックが崩れていく。マイペースを刻みはじめた選手それぞれの個性が出てくるため順位も変動する。沢田選手はシクロクロスのようにフロントタイヤを差し込む走りも見せ、2番手を射程にした好位置でレースを進める。
一方、平野選手もラップを縮めてきた。前の選手をパスして5番手に上がっている。ケガした足をかばったためか痛みの出てきた腰に手を当てながらもプッシュを繰り返した。



終盤。80%カット・ラップアウトのエリート選手が続発してフルラップは一桁台に。雨は小降りになったが泥の状態は変わらない。コース上にはジュニア選手が散らばり、抜き去る際の抵抗になっていた。

沢田選手は再びラップを上げて単独2番手が見える好走。しかしその矢先にリアホイールが悲鳴を上げるかのような音を発した。強いトルクがかかるセクションはバイクを降りて押しながら走り、テクニカルフィードへ。
ホイール交換してリスタートするが、ここで4番手に下がってしまう。平野選手はイーブンペースを保ちながら走っていたが、スタートエリア直前の土手のダウンヒルで不運にも張り出てきた標識に接触して転倒し、再び足にケガを負ってしまった。



ファイナルラップ。平野選手は最終周回を残し、5位でレースを終えた。この日のために彼がしてきた時間と努力を知るものなら、この結果と不運にある種の怒りを覚えるだろう。でも彼はすぐに2020年を、帰国してからの練習メニューを考えていた。前だけを見ている。
そして沢田選手。彼は懸命に前を追っていた。今シーズンの彼は、どんなに先頭と差があっても自分で結論付けない強さが出てきている。最後までプッシュして4位でのフィニッシュとなった。



これで2019シーズンに計画した全レースを完了。常に2020年を念頭においた高いレベルの走り、強化を狙ったシーズンだった。
あと2週間で2019年が終わろうとしている。
2020年は決して後悔しない。2019年にすべて済ませてきたからだ。

今シーズンの沢山の応援に感謝致します。
TEAM BRIDGESTONE Cycling MTBはもっと強くなり、そして夢を叶えます。
ありがとうございました。

-------------------------

最新記事

Article

前の記事へ 次の記事へ