開幕直前!飯島誠のトラック世界選手権見どころガイド
いよいよ開催が迫ってきた2020年トラック世界選手権大会。東京2020オリンピックの出場枠をかけた最後の戦いが始まります。
TEAM BRIDGESTONE Cyclingの選手および機材開発のサポート、そしてライバル国の視察のために開催地であるドイツ、ベルリンへと向かう直前の飯島誠に、今大会の見どころを聞きました。
アルカンシエル、そしてオリンピック出場をかけた決戦
ーー まず、自転車トラック競技にとっての世界選手権はどのような存在なのでしょうか。
飯島:ロードレースと同じように、世界選手権で優勝した選手は、世界チャンピオンの証であるアルカンシェルジャージを同種目にて1年間着用できるため、年間の最重要レースと言えます。ロードレースの場合は、ツール・ド・フランスなど世界選手権と並ぶような重要レースがありますが、トラックの場合は、世界選手権が頭一つ抜けている存在です。
今回はさらに東京2020オリンピックの出場枠を争う最後の国際大会ですので、例年よりも重要度はぐっと増しますね。日本もそうですが、各国の代表選手を決めるうえでも、この世界選手権での結果は大きく考慮されるので、オリンピック出場が当確線上の選手たちは目の色を変えて臨んでくるはずです。
ーー やはりオリンピックイヤーの世界選手権は雰囲気が違うものですか?
飯島:そうですね。私も過去に9度世界選手権に出場しましたが、2008年の大会は北京2008オリンピックの直前だったので「レースを失敗してしまうと、オリンピックに出れないかもしれない」と感じ、レースが始まる前の監督との会話で、競技生活の中ではじめて声が上ずってしまうほど緊張したのを覚えています。
オムニアムやマディソンなどのゲーム種目では、一発逆転をかけてチャレンジしてくる選手も当然いますし、観ている方もワクワクするレースが続くと思います。
ーー 今回の世界選手権で表彰台に立つ選手が、やはりオリンピックでもメダル候補となりますか?
飯島:もちろんそう言えます。ただ本番までは5カ月近くあるので、選手は世界選手権でピークを作ったら、一度身体を休め、気持ちもリフレッシュさせて、オリンピックでさらに高いパフォーマンスを発揮できるよう調整していきます。
上位の選手が、油断しているとオリンピック本番で伏兵に足元をすくわれる可能性も大いにありますね。
イメージとしては、世界トップレベルの選手たちは、昨年11月からのワールドカップ全6戦が80%のパフォーマンスだったとすれば、世界選手権が100%、オリンピックでは、120%までパフォーマンスを高めてくると考えて良いでしょう。
ーー 今回のベルリンの競技場には行ったことがありますか?
飯島:今回の会場へは初めて行くのですが、過去大会のリザルトを見ると、比較的タイムが出やすい競技場のようです。世界記録がいくつか出てもおかしくないですね。
ベルリンでは6日間レースと呼ばれるヨーロッパで人気のレースも行われており、トラック人気も高いです。観客の盛り上がりも相当なものになるはずです。タイムスケジュールを見ても、観客がエンターテイメントとして楽しめるようになっていますし、ビール片手に声援を送る人も多いのではないでしょうか(笑)。
ーー 機材面でも各国のオリンピック機材が出揃うことになります。
飯島:そうですね。この世界選手権で各国がどんな機材を使って走るかは、オリンピックを戦ううえでも、ひとつの試金石となります。ぜひ、選手たちがどんな機材で戦うのかにも注目してみて欲しいです。
日本代表選手の活躍に期待
ここからは飯島による各日程の日本代表注目選手の活躍、そして見どころを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
■2月26日(水)
男子パシュート予選/1回戦
出場予定選手:窪木一茂、近谷 涼、今村 駿、沢田桂太郎
午前中の予選は、バンクコンディションもまだ良くなっていないですし、単走なのでタイムが出しづらい状況です。そんななかでしっかりと55秒を切って予選を通過することができれば、1回戦以降で、54秒前半や53秒台といった日本記録を大幅に更新するタイムも狙えると思います。選手たちもこの大会にしっかりと照準を合わせてきているので、期待して良いでしょう。
男子チームスプリント予選/決勝
出場予定選手:雨谷一樹、新田祐大、深谷知広
ワールドカップで2戦連続で金メダルを獲得している日本チームは、他のライバル国からも注目される存在です。42秒台でまとめることができれば、表彰台も狙えるでしょう。今の日本チームの強みは、3人ともにミスなくレース運びができる点です。そのスムーズな走りにもぜひ注目してみてください。
■2月27日(木)
男子ケイリン予選/決勝
出場予定選手:脇本雄太、新田祐大、深谷知広
出場選手の半数に表彰台のチャンスがあるような、混戦必須のレースとなることが予想されます。チームブリヂストンサイクリングから出場する脇本には、どのようなレース展開になっても余裕を持った立ち回りをして、表彰台を目指して欲しいです。地力は世界トップクラスであることは間違いありません。最大のライバルはオランダ勢でしょう。
■2月28日(金)
女子オムニアム
出場予定選手:梶原悠未
男子チームスプリント同様に、ワールドカップで強さを見せた梶原選手が出場します。各国のフルメンバーが揃う世界選手権でも同様の活躍ができれば、オリンピック本番に向けて大きな弾みをつけることができます。
■2月29日(土)
男子オムニアム
出場予定選手:橋本英也
ワールドカップ第5戦で銅メダルを獲得した橋本英也が出場予定です。ここ数年で着実に力をつけているので、"当たり前のことを当たり前にやる"ことができれば、世界の上位と互角に戦うことができるでしょう。さまざまな要素が絡み合うゲーム系種目なので、その"当たり前"が一番難しくはあるのですが。第1種目のスクラッチを良い感触で走れれば、彼の持つセンスの良さを発揮して、その後の種目も期待できると思います。
男子スプリント
出場予定選手:脇本雄太、新田祐大、深谷知広
男子スプリントの注目は今季ワールドカップで3度表彰台に立った深谷選手でしょう。チームスプリントでも3走を務めており、今シーズンにおける日本代表チーム活躍の原動力と言っていいでしょう。ワールドカップの結果からも実力は折り紙付きですから、自信を持って予選を走り、1回戦が免除される上位4名に入ることが、1日の短期決戦であるスプリントでは、まず重要になってきます。
■3月1日(日)
女子ケイリン
出場予定選手:太田りゆ、小林優香
女子ケイリンは群雄割拠で誰が勝ってもおかしくありません。ワールドカップでは、なかなか納得できる結果が残せなかったチームブリヂストンサイクリングの太田りゆのポイントは1回戦になるでしょう。1回戦を突破できれば、良い流れで2回戦以降を戦えるはずです。自分を信じて、しっかりと自身の強みを発揮して、世界の強豪と戦ってほしいです。
飯島誠による各種目紹介は過去記事をご覧ください。
(写真/播本明彦、小暮 誠)
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