長く愛される自転車づくりを【アンカー中の人 Vol.2 デザイン設計課 太田】

アンカーに関わる20,30代のスタッフをフィーチャーする連載、「アンカー中の人」。

第2回は、20年モデルで発表したACTIVE LINE(アクティブライン)をはじめ、TEAM BRIDGESTONE Cyclingの選手たちが駆るRS9sのチームエディションのデザインなどを手掛ける技術戦略部デザイン設計課の太田海斗(おおたかいと)に話を聞きました。

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チーム制で取り組む自転車づくり

ーー まずはデザイン設計課の仕事・役割について教えてください。

太田:アンカーの自転車は、企画担当と設計担当、そしてデザイン担当の3人体制で1つのモデルの開発に携わっています。まず、企画担当が主体となって、コンセプトや想定する価格帯、スペックなどを決めます。設計担当は、そのスペックに基づいた自転車の設計を行います。
デザイン担当は、そのあいだを繋ぐイメージです。企画担当とデザインやカラーリングのコンセプトを検討していくこともありますし、設計担当と一緒に、コンセプトをもとにした具体的な形状を詰めていくのも私の役割です。それぞれの立場もありますが、「かっこいいもの」を作ろうという目標は一緒なので、意見を出し合いながら、開発を進めます。

デザイン設計課の主な仕事は3つで、デザインコンセプト、プロダクトデザイン(スタイリング)、グラフィックデザインを作ることです。とくに重要なのは、デザインコンセプトですね。マーケティングリサーチを行ったり、自転車を届けたいユーザーを想定して、コンセプトスケッチをまず作っていきます。そしてそのコンセプトスケッチを指標として、プロダクトデザインやグラフィックデザインも検討を重ねていきます。

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コンセプトを落とし込んだフレームデザインをスケッチする

ーー 制作期間はどれぐらいかかるのでしょうか?

太田:自転車にもよりますね。開発期間が1年ほどの自転車もあれば、2~3年かかる自転車もあります。ACTIVE LINEはリブランディングの要素が強かったので、デザインコンセプトだけでも1~2年と、とても時間がかかりました。かなり生みの苦しみはありました(笑)。

ーー 仕事で苦労することは?

太田:とくに難しいのはグラフィックデザインです。自転車ってF1のようなレーシングカーを除けば、いちばんグラフィックの入っている部類のプロダクトだと思います。家電とか家具、雑貨品などで自転車ほど3次元でグラフィックが入っているものはありません。しかもフレーム(パイプ)も複雑な形状なので、グラフィックデザインするうえではもっとも難しい部類のプロダクトではないでしょうか。
さらにサイズ展開もあり、サイズによっても少しずつグラフィックサイズと位置を調整しなけばいけない点も、自転車ならではの大変さかなと。

平面でかっこいいデザインを描くことと、それを3次元にするのは全く難易度が違います。実物にしたときにかっこよさを再現するというのが、自転車デザイナーの腕の見せ所だと思います。

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サンプルの試作車を確認しながら、微修正を加えていく。ここまでくるとバイク開発も大詰めだ

より多くの方の日常にスポーツサイクルを提案したい


ーー 自転車をデザインするうえで大切にしていることは何でしょうか?

太田:その自転車単体での美しさやかっこいい佇まいはもちろん追求しますが、ユーザーが乗っている姿を想像して、使用シーンやユーザー込みでの見え方を大切にするという意識を持っています。

あとは、奇抜すぎることをしないというのが大事かなと。ただトレンドを追うだけではなく、5年後10年後も「いいよね」と思われる、ユーザーさんに大切に乗り続けてもらえる自転車作りをしていきたいと考えています。

ーーTEAM BRIDGESTONE Cyclingのチームのバイク(RS9s)もデザインしています、どのようなコンセプトだったのでしょうか?

太田:白、黒、赤の3色がブリヂストンのカラーリングなのですが、市販のレーススタイルでは赤をそこまで入れていなかったので、チームのバイクでは赤を印象的に入れて、チームらしさと、ブリヂストンらしさを醸し出すよう意識しました。

レーススタイルとガラっとデザインを変える案も当初あったのですが、ファンのみなさんに支えられてチーム活動をしているので、ユーザーのみなさんが乗られるバイクとの親和性も大切にして、今のデザインになりました。

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TEAM BRIDGESTONE Cyclingが駆るRS9s。ダウンチューブ下の赤いラインが印象的

ーー過去のアンカーの自転車の中で、印象に残っているモデルはありますか?

太田:2つあります。1つめはネオコットです。僕がもともとクロモリフレームが好きだったのもありますが、自転車の機能と形状が一体化している稀有な例だなと。バルジ製法という製造方法が、フレーム形状のアイデンティティになっていて、世界に誇れるバイクだと思っています。

もう1台は、2014モデルのRIS9です。闘志で血液が沸き立ち浮かびあがる様をグラフィックで表現し、バイクを駆るライダーの気持ちの高まりを意識させるデザインなのですが、フレームのグラフィックに意味を持たせるというのは、ほかの自転車ブランドでもあまり行われていなかったので、印象に残っています。フレーム形状に合わせてラインを入れているのも、塗装技術の進化を感じさせます。

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印象深いモデルとして挙げたRIS9。細やかなラインがフレーム全体を流れる

ーー今後どんなことに取り組んでみたいですか?

太田:来年開催が予定されている東京2020オリンピックは、やはりワクワクします。私も開発に携わったトラックフレームが、日本代表として母国開催のオリンピックという大舞台を走る姿を見たら、感動するでしょうね。努力を積み重ねて来た日本代表選手のみなさんが100%の実力を発揮するためのお手伝いができていたら嬉しいですね。

あと、20年モデルで立ち上げたACTIVE LINE(アクティブライン)をさらに強化して、スポーツサイクルを日常に取り入れられるような提案をしていきたいです。

ACTIVE LINEはレースシーン以外での使い方を提案しているので、UCI規定を考えないで、乗り心地やデザインを追求したものにも、いつかは取り組んでみたいですね。

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◆ アンカー中の人 Vol.1「ACTIVE LINEに込めた想いとは?」はこちら

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