2020年を振り返る/11月、トラック全日本選手権 世界一になるための日本一への軌跡

2020年を振り返る/トラック全日本選手権 世界一になるための日本一への軌跡

(橋本)

11月5日から8日にかけ、4日間の日程で行われた2020年の全日本選手権。世界舞台でのメダルを狙うためには、まずは日本で一番であることが絶対条件とも言えます。その宿命を背負い全日本選手権に挑んだTEAM BRIDGESTONE Cyclingの選手たち。中でも、東京2020オリンピック代表内定選手である脇本雄太と橋本英也は、その威信をかけて戦いました。

結果、合計13種目に出場したチームブリヂストン選手は9種目で勝利、すべてのチーム選手が表彰台に上ります。橋本はこの大会で大きく活躍し、しかし脇本は今大会で悔しい思いをすることになりました。そして近谷涼、太田りゆは自身の壁を1つ乗り越えられた大会となりました。

この4日間を、5つのトピックスにまとめました。

●橋本英也が出場6種目中5種目勝利
●近谷涼が個人パシュートをはじめ3種目に勝利
●太田りゆ、女子スプリント優勝
●脇本雄太は男子ケイリンで2位
●競輪選手養成所にいる窪木一茂が中距離種目で善戦


(脇本)

【2020トラック全日本選手権】 チームブリヂストン選手出場種目 リザルト 
2020年11月5(木)~8日(日)
 ・女子チームスプリント 優勝:太田りゆ
 ・男子チームパシュート 優勝:近谷涼・橋本英也・沢田桂太郎・孫崎大樹
 ・男子エリミネーション 優勝:橋本英也 2位:窪木一茂
 ・男子マディソン 優勝:近谷涼・沢田桂太郎 2位:橋本英也・孫崎大樹
 ・女子スプリント 優勝:太田りゆ
 ・男子スクラッチ 優勝:橋本英也 3位:窪木一茂
 ・男子スプリント 4位:脇本雄太
 ・男子オムニアム 優勝:橋本英也、2位:近谷涼
 ・男子ケイリン 2位:脇本雄太
 ・女子ケイリン 3位:太田りゆ
 ・男子個人パシュート 優勝:近谷涼 2位:窪木一茂
 ・男子1kmタイムトライアル 12位:沢田桂太郎
 ・男子ポイントレース 優勝:橋本英也、2位:近谷涼


(橋本)

●橋本英也が出場6種目中5種目勝利


 男子オムニアムでの東京2020オリンピック代表内定選手である橋本英也が、その男子オムニアムを筆頭に、男子エリミネーション、チームパシュート、男子スクラッチ、男子ポイントレースと出場6種目中5種目での勝利を挙げました。

3月の世界選手権で自身の課題として感じたスタミナの改善に励み、それを着実に自身のものとしている橋本。すべての種目で、特に後半に余裕を持って走れたと言います。各種目での橋本のコメントを抜粋します。

「かなり脚を溜めた状態で走ることができた」(エリミネーション)
「ゴール前で余裕を持てたのも、有酸素領域が改善できているおかげ」(スクラッチ)
「僕が後ろの集団をかなり引いていました。メイン集団のペースを落とさせないというプランで」(オムニアム)

中距離種目での総合競技とも言えるオムニアムで東京2020オリンピック出場を来年に控えた橋本。まず日本一であるという圧倒的な実力を、全日本選手権で大きく見せることができました。


(近谷)

●近谷涼が個人パシュートをはじめ3種目に勝利


 橋本の活躍が目立った一方で、近谷涼も確かな成績を重ねられた大会でした。5種目に出場した近谷は3種目で優勝、2種目で2位となりました。

チームパシュートでは4走として、ゴール前に先頭を引いてタイムを引き上げる役目を担って優勝。沢田桂太郎と組んだマディソンでは、橋本・孫崎大樹のペアと僅差の戦い、最終周回の倍ポイントで逆転の優勝。
オムニアムとポイントレースでは好調の橋本に遅れをとりましたが、個人パシュートでは、長く目標とし共に切磋琢磨してきた大学の先輩、2年連続の覇者であった窪木一茂を下し勝利を手にしました。

その近谷ですが、先の5月の練習中に手首を骨折し、まともな練習ができない日が長く続いていました。

「8月になっても数値が格段に下がっている。チームキャプテンでもありますから、チームの大きな負けは許されないというか、自分で納得がいかない。表彰台には乗らないといけないという、ある意味責任感で、目の前にあることを積み重ね、本当にできる限りのことをやってきました。
『やらないと駄目だ』って思い込んでやりきれた。自分がそういう性格だったのが良かったですね」(近谷)


(太田)

●太田りゆ、スプリントで盟友を下し初優勝


チームスプリント、スプリント、ケイリンと女子短距離種目を走った太田りゆ。ケイリンでは決勝で走りに迷いが見えたこともあり不本意な3位となりましたが、これまで得意ではなかったという印象だったスプリントで勝利。準々決勝でライバルであり盟友でもある小林優香選手(Dream Seeker Racing Team)を下しての勝利に、その喜びもひとしおでした。

「徐々にですが世界の強豪と呼ばれる選手たちとの差も縮まってきているので、名前を恐れずに、しっかり自分も強いんだという自信を持ってレースできたらなと思っています」(太田)

東京2020オリンピックのリザーブ(次点)選手としてケイリンのみならずスプリントでも自信を深められた大会となりました。


(脇本)

●脇本雄太、ケイリン、スプリントとも勝利に届かず


東京2020オリンピックでの男子ケイリン/スプリントの代表内定選手である脇本雄太。スプリントとケイリンの両種目に出場し、スプリントでは余裕すら見えた走りで順当に準決勝まで勝ち上がりましたが準決勝で敗れ、3、4位決定戦でも遅れをとり4位に。万全の走りを見せたケイリンの決勝では先行して勝負をしかけましたが、ゴール前で差され2位に。

「自分の中で、これぐらいの距離だったらしっかり保つ自信があったので、そこに賭けてみました。僕としては自信があったんですが、それを上回る力で負けてしまったと思っています」(脇本)。

今大会では苦汁を飲んだ脇本ですが、勝負の中から課題を見つけ、それを着実にクリアしていくのが脇本の実力であり魅力です。来年夏の東京2020オリンピック本戦で世界一のメダルを手にするためのヒントを、ここで見出したことでしょう。


(窪木)

●競輪選手養成所にいる窪木一茂が中距離種目で善戦


2020年4月より日本競輪選手養成所に入所し、競輪選手になるための訓練を積んでいる窪木一茂。所外で走ることはほぼなかった2020シーズンですが、この全日本選手権にのみ出場しました。
昨シーズンまで中距離種目での勝利を見据えてトレーニングを積んできた窪木でしたが、今季は競輪のための短距離系トレーニングのみ。そのためスタミナを要する種目では昨年よりも精彩を欠いたように見えましたが、それでも表彰台を3種目で獲得しています。

「この半年間、スプリント中心、短距離中心のトレーニングを続けてきています。今回はどこまで通用するかなというところで挑戦しに来ました。優勝はできませんでしたが、フィジカルはそこまで落ちてない。それにスピードがついているというのが想像通りだったので、その点において満足しています」(窪木)

2021シーズンもチームブリヂストン選手として走る窪木。2021年3月に養成所を卒業し、チームのレース活動に戻ってきます。「競輪、中距離競技、おろそかにするつもりはありません。しっかり頂点まで上り詰めたいと考えてます」(窪木)


(チームパシュート:左から孫崎、橋本、近谷)

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