選手が稼いでくれた時間は1秒たりとも無駄にしない:フィードゾーンの役割について【MTB小林監督インタビュー】
みなさん、こんにちは。
先週末はレースがお休みでしたね。
4/10,11の菖蒲谷レースで、沢田選手の前輪がパンクしてしまったときに〝フィードゾーン〟でホイール交換をして、たった7秒後には沢田選手がレースに戻っていたのですが、そもそも〝フィードゾーン〟は一体何をする場所なのでしょうか。
今回は、レースに欠かせない〝フィードゾーン〟の役割について、メカニックとしてもご活躍されているMTBチームの小林監督にお話を伺ってきました。
〝フィードゾーン〟って??
コース脇に設けられている、選手のドリンク補給やタイヤ交換などの機材修理を行うゾーンのことです。
小林監督「自転車競技、特にオフロード系のMTB(マウンテンバイク)やシクロクロスなどのレースでは、未舗装の路面を走行するため、機材への負担がとても大きいのです。木の根やごつごつした岩、鋭利な砂利などが剥き出しのコースを他の選手と時間を競いながら全力勝負するわけですから、どんなに整備された機材を使用していても、タイヤのパンクやギアの不調といったトラブルが頻発してしまいます。
そしてMTBレースではバイクに不調があったとしても、自転車自体の交換ができないためトラブル発生時には〝フィードゾーン〟に入ってタイヤ交換や修理をし、即座にレースに戻る必要があります。」
F1レースのピットでタイヤを交換するシーンがあります。ピットインして、瞬時にタイヤ交換を済ませて再びレースに戻る光景、あれをイメージしていただくとわかりやすいですよね。
このとき修理は、選手が自力ではなく、フィードゾーンに待機している所属チームのメカニック(整備士)が対応してくれます。
小林監督「選手は、停車してから悠長にリクエストするような余裕はありませんので、フィードゾーン入りする前にハンドサインや大声で何が欲しいかを明確にメカニックに伝えます。そしてメカニックは選手の要望やバイクのコンディションを瞬時に把握・判断して作業に突入するわけですが、ここはメカニックと選手の連携度合いや、メカニックの熟練度が如実に出るポイントでもあります。」
レース時の緊張感や、フィードゾーンが時間との真剣勝負であることが伝わってきます。
ちなみに、先日の菖蒲谷のレースでは、フィードゾーンにピットインしてからわずか5秒で小林監督が前輪交換作業を終え、その2秒後には沢田選手はリスタートしています(!)
これは本当に驚異的なスピード。おおよそタイヤの交換作業は20-30秒近くロスをしてしまうことが多いようなんです。
〝選手が稼いでくれた時間を1秒も無駄にしないことが、何より大切〟と話してくれた小林監督。その姿勢が驚異的作業スピードを生み出しているのですね。
フィードゾーンもレースの一部。
フィードゾーンに滞在している時間も、もちろん走行時間としてカウントされます。
自転車競技はコンマ数秒を競う世界。コーナーごとのわずかな時間差の積み重ねが勝負を左右する中で、フィードゾーンでの修理に数秒、もしくは数十秒を費やす意味がお分かりでしょうか。そうです、ここでの作業時間は勝負に直結するのであり、レースの大事な一部分でもあるのです。
メカニックの作業スピードや選手との連携が、各チームの勝敗を決めるといっても過言ではありません。
フィードゾーンは、どうしても裏方やサポート役というイメージが強く、あまりスポットライトに当たってこなかった部分ですが、ここでしっかりと支えてくれる人たちがいるからこそ、選手も安心してレースに集中する事ができるのですね。
小林監督「海外での大きなレースでは、フィードゾーンもメディアの取材対象となっています。トップ選手が所属するチームのフィードゾーンはプロトタイプの宝庫でもありますし、彼らの使用しているアイテムや機材調整の内容などは常に注目の的なんです。」
こういうことを教わると、観戦の奥行きが広がりますよね。
みなさんにとっても、レースの楽しみが少しでも広がると嬉しいな、と思います。
それでは、今日はこのへんで。
次回のレースとブログ更新も、お楽しみに。
text:Kumi.Fujita
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