TOJを前に宮崎ロード監督が考える『好調であるため監督がすべきことは』

2021年、ロードレースでは開幕から6戦のうち3勝を挙げているTEAM BRIDGESTONE Cycling。
チームの大きな年間目標の一つである、日本最大級のステージレース、《ツアーオブジャパン》を来週に控えた宮崎ロード監督に、ここまでの好調さへの分析を聞きました。


(宮崎監督 2003  左から3番目)


今季からロードチームを率いている宮崎景涼監督は、チームとはかなり長く関わってきています。

2003年、ロード選手としてチームに加入、欧州レースを中心に2年間を選手として走りました。2004年シーズンで選手を引退、別の仕事に就いたのちに、チームの母体であるブリヂストンサイクルに入社します。それから13年間、ずっとチーム担当の役職を務めてきました。

プライベートでも乗り続けるサイクリストであり、サイクルレース文化に敬意を払い続ける宮崎監督。チーム担当だった頃も、選手と会社とバランスをとりながら橋渡しを行いました。



(2018  右)


2020年をもって退社、2021シーズンからは一人の監督としてロード・トラックチームを率いていく宮崎監督。その実績も、これから積み上がります。

ロードレースでの監督とは、どんなことをすべきなのか。どんな存在であるべきなのか。

宮崎新監督はそのキャリアの初年度を、勝率5割というめざましい成績で始めています。直接采配を振るってきてはいなかったものの、選手に近い目線で現場を見てきた彼は、今ここで起こっている現象のその理由を、どう分析しているのでしょう。

ロードレースでの年間の大きな年間目標である《ツアー・オブ・ジャパン》を前に、初心を書き残す意味で、監督日記の第一歩を公開してもらいました。


(2014)




今年、チーム監督という立場でチームに携わることとなった。

今までもチームには携わってきた。これまでは会社の方針とチームの活動を結びつけ、現場以外の場面でチームを支えることが主な仕事だった。

今年からは、現場で直接選手たちを支持し牽引する役割に。



(2019)


監督とはなんぞや? 戦略? 采配?? 

自転車ロードレースでは、サッカーや野球のように試合の展開を常に把握していることは難しい。

周回コースであれば、コースを1周するうち、目の前を通過するほんの一瞬と、主催者のラジオツールくらいしか情報がない。
そんな状況で、選手たちに指示を出したり、作戦を伝えたりするのは難しい。

レース中、監督にできることはボトルを渡すことか、「エネルギーちゃんと取れよ!」という当たり前のことを無線で偉そうに呟くことくらいである。



(橋本英也 2021/3/13 第1回JBCF播磨中央公園クリテリウム)


(窪木一茂 2021/4/24 JBCF 東日本ロードクラシック 群馬大会 Day1)


(山本哲央 2021/5/15 JBCF 群馬CSCロードレース5月大会)


それでも今年のチームは調子がいい。

先のレースではチーム員半数での参加、それでも勝利できている。

監督とはなんなのか? は、正直まだよくわかっていない。

自分は選手のトレーニングメニューを作るわけではないので、選手強化と言えることはほとんどしていない。
しかし、ただ偶然の積み重ねで今の状況があるなら、チームの好調は維持できない。

ということは、今の好調を作っている何かしらの理由を見つける必要がある。
そこで改めて今の状況を分析したところいくつか思い当たる節がある。


・チームの目的を選手に伝えている

 毎レースに目的と基本的な作戦を決め、レース中迷ったときの行動指針を作る


・選手同士の目的が同じ

 選手が目的を同じくするので、チームでの動きがブレにくい


・監督はコーチではない

 トレーニングメニューを作らないが、その代わりに『がんばる目的』を明確にする



(2019)


「監督はコーチではない」
もしかしたらこれがポイントなのかもしれない。


例えば、勉強ができない子どもがいたとする。その子に『勉強をしなさい!』と指導するやり方はしたくない。
その子はただ勉強のやり方を知らないだけかもしれない。
そんな子にただ勉強しなさいと伝えても、とても効率が悪い。

この時、「効率の良い勉強の仕方を教える先生役」がコーチだと思う。
どうしたら効率良く学力が上がるか、そのための勉強のやり方を教える人だ。

では監督の役目とは?


なぜ、勉強をしなければならないのか?を伝えること。
要するに親役なんだと思う。


(2019)


その子どもが何を目指していているのかを自覚させること。
そのためには何が必要で、何をすべきなのか? を理解させること。
そしてそのための行動を起こさせるのが、監督なのだと思う。

選手たちは自分でも分かってはいるけれど、考えがブレたり、迷ったり、怠けたりしてしまうことは多々ある。

でもそんな時に、自分が決めた目的をしっかりと再認識させられ導く役割、それが監督なのではないだろうか?

強くなるための答えは選手それぞれが皆持っている。

親である監督は、

選手自身も分かってはいるけれど
  行動に移せていない部分・不安な部分を

  →理解し認めて
  →誘導できれば

各選手が持つ力を100%発揮させられるのではないかと思う。

・選手たちの持っているものを受け止め

・チームの方向性をしっかり示して

活動できていること。


これが、ここのところの良い結果に結びついているのかも知れないが、まだわからないことばかりだ。

わからないことだらけなので、自分も選手たちと一緒に成長していかなくてはならない。

(宮崎景涼/ロード・トラック監督)



《ツアー・オブ・ジャパン》という大きなロードレース、勝利に向け采配する宮崎監督に、そしてこれまでとは違った新たな環境で勝利に挑むTEAM BRIDGESTONE Cycling選手に、皆さまの応援を、なにとぞよろしくお願いいたします。

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