【スピードこそが勝利につながる】ロードレースとトラックレースとの関連性


(左から:窪木、山本、兒島)


今週末6月27〜28日、そして来週末の7月3〜4日、今季のTEAM BRIDGESTONE Cyclingに加入した4選手が、トラックレースに出場予定です。

今週末に鳥取県・倉吉自転車競技場で開催されるトラック全日本学生選手権には、河野翔輝と兒島直樹が出場。
7月3〜4日に長野県の松本市美鈴湖自転車競技場で行われるJICF国際トラックカップには、新山響平、山本哲央、河野の3名の出場です。

この4名の出場選手のうち、新山はトラック短距離に注力する選手。競輪とトラック短距離とを両立させています。
一方で、山本、河野、兒島の学生選手3名は、ロードレースにも出場する中距離トラック選手という立ち位置です。
山本は先のJプロツアー・ロードレースで勝利していますが、3人が目指す大きな目標は、3年後のパリ2024オリンピックへのトラック種目での出場です。


(河野)

ロードレース、グランツールでも活躍するトラック選手


昨今、ロードレースとトラックレース、両方の競技で活躍する選手が、特にロードレースで目立ちます。

トラックレースにも出場する選手が、ロードレーサーとしてツールドフランスに代表されるグランツールでも活躍するのは、珍しいことではありません。

世界のトップ選手を例に挙げると、ブラットリー・ウィギンス選手(イギリス/選手引退)、ゲラント・トーマス選手(イギリス/イネオス・グレナディアス)2名のイギリス選手、そしてフィリッポ・ガンナ選手(イタリア/イネオス・グレナディアス)が挙げられます。

ウィギンス選手とトーマス選手は、ロンドン2012オリンピックが開催されるにあたり、イギリスが実施したトラック強化施策のたまものと言えます。共にオリンピックでのチームパシュートのメンバーとして金メダルを獲得した経験を持ち、ウィギンス選手は2012年に、トーマス選手は2018年に、共にツール・ド・フランスを総合優勝しています。

また、ガンナ選手は現在世界トップの個人タイムトライアルのスペシャリスト。トラックの個人パシュートの世界記録保持者で、ロードのタイムトライアルでも多くの勝利を挙げています。その桁外れのパワーを活かし、ロードレースでも独走力を生かして逃げ勝つパターンも見られます。

また日本のJプロツアーのロードレースでも今シーズン、これまでの7戦中、橋本英也、窪木一茂、山本哲央と半数の3戦をトラック競技でも活躍するチームブリヂストン3選手が勝利しています。



(橋本、山本)

上れるスプリンターを擁するチームブリヂストン

ロードレースは複雑な競技です。スプリント力が弱い選手でも、ゴールまでにライバルたちの体力を削って走れば、スプリント力に勝る選手たちを相手に勝利できます。反対に、自分がライバルにスプリントでは勝てそうもないと思えば、ゴール前の上り坂でライバルを置き去りにする戦略を取るなども可能です。それぞれの脚質で戦い方は様々あります。

ですが、戦略とはいえ結局のところ自転車競技は一番速く走った選手が勝利します。自分がライバルよりも速い速度域を出せれば、ライバルを抜き去ることは容易なわけです。つまりいかに速い速度域、速いスピードを出すことができるかどうか、と言うところが重要となってきます。

トラック選手は高いスピードを持っています。それに加え、さらに上りにも適応できる有酸素能力を磨き上げることも練習次第では可能です。

事実、チームブリヂストンでは窪木一茂や今村駿介がそういった脚質を持った選手です。上りにも耐えうる長距離能力を使って、最後の最後の勝負どころに喰らい付いていきます。スプリントになれば、トラックを経験している選手たちは大いに優位です。


(窪木、今村)

また、ロードレースそのものも高速化しています。スポーツの常ですが、選手の特性は磨かれ、機材は伝達能力や空力性能などで高速化しています。必要な制動力を得られるディスクブレーキが多くみられるのも、速度域が上がっていることを象徴しています。

*世界で戦えるスピードを実際に出せることの優位性


現在、ロードレースでは、今の日本のチームはまだ世界と肩を並べられるほどには成長していないのが現実です。しかし、トラック競技では、短距離、中距離ともに世界でメダルを狙えるレベルに達しています。

乱暴な例えではありますが、ツール・ド・フランスでのゴールスプリントをしているチームと、ラスト4kmをチームブリヂストンのチームパシュートと比べれば、絶対的な速度ではチームブリヂストンの方が速いかもしれません。もちろんそこまでの展開があるので、同じ土俵で語るのは無理がありますが、世界で戦えるスピードを実際に体感していることは、体感していないチームに比べて有利に働くと信じています。

反対に、ロードレースでの力が、トラックレースに有利になる点は持久力です。トラック競技も1種目ごとで見ると距離は短いですが、オムニアムは1日に4種目を走り、チームパシュートも1日に2度全力を尽くすことが求められます。ロードレースで得られる長時間走行の中での持久性と回復力は、トラック中距離競技に特にプラスに働きます。


(橋本)

今年チームに加入したトラック経験者の若手選手に望むこと


先に紹介した、チームブリヂストンの中距離トラック若手選手の3名。宮崎監督は彼らに求めていることをこう述べています。

「彼らに求めているのは、パリ2024オリンピックを直接的に目指せるトラックで必要となるスピード。それを身につけるための身体作りを最優先としています。そのため、直近でのロードレースでの結果はそこまで求めていません。

それよりも、しっかりと目的を明確にし。その目的に対して一つ一つの行動が意味を持ったもにできるような考え方を身につけて欲しいと思っています。

3名ともチームに加入した半年前とは見違えるように成長しています。近いうちにそれがはっきりとわかると思うので、楽しみにしていてください」


今週末、そして来週末と、トラック競技で勝利を狙える山本、兒島、河野の3選手。チーム入りから半年が経ち、学生選手はどのようにプロの世界へと適応していっているのか。現在までの彼らの成長と活躍を見る一つの機会となる直近のトラックレースでの結果に、ぜひご期待ください。



(兒島)



(河野)


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(山本)

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