現役選手と一緒の目線でモノづくり オーストリッチ/アズマ産業株式会社

TEAM BRIDGESTONE Cyclingを長年に渡ってサポートいただいている、サイクリストにはお馴染みの輪行バッグや、フロントバッグ、サドルバッグなど数々の自転車の鞄製品を生み出してきた『オーストリッチ』を運営するアズマ産業(株)の伊美社長にインタビューを行いました。

<写真:アズマ産業株式会社 伊美哲也社長(アズマ産業提供)>

現役選手からなど、積極的にユーザーの意見を拾って商品改善に反映していく創業から変わらないモノづくりの姿勢がとても素敵でした。

石油の商社マンから家業の自転車鞄屋さんの2代目に

ーーアズマ産業さんはどのような経緯で始まった会社なのですか?

1968年に父が興した会社で、私で二代目になります。父は元々ヘルメットの会社に勤めていて、その時の営業先がオートバイ屋さんだった。当時のオートバイ屋さんは自転車とオートバイを併売しているお店が多く、「これからの時代は自転車だ」ということをよくお客さんから聞いていたそうです。父は九州の天草から裸一貫で東京に出てきて、一旗上げたいみたいなところがあったんだと思います。30歳手前で独立して、自転車の鞄屋さんとして始めたのがこの会社です。

(写真:アズマ産業提供)

ーー一番最初の商品は何だったんですか?

オートバイ用のボディカバーだと思います。そこから発展して、自転車用のカバーなどを作り始めました。

ーー伊美社長に代替わりしたのはいつですか?

元々は家業を継ぐつもりはなく、石油系の商社で働いていました。ただ、父が独立した年をどこか意識していたところがあり、29歳の時にこの会社に入社しました。

ーーキャリアがガラッと変わりましたね。

本当にガラッとですね。扱っていた商材が石油ですし、仕事は基本的にファックスや電話で行っていたのでまずモノを見ることがなかったんです。なので自分たちでモノづくりをするということは凄く面白かったです。

<写真:伊美社長ご夫妻(アズマ産業提供)>

ーー仕事内容も変わったのではないですか?

そうですね。うちみたいな規模の会社だと何の担当、という仕事の区分はなく、経理と縫製以外は基本的に全て自分でやります。裁断をしたり、シルクスクリーンで印刷をすることもあります。サンプルを作る前に、職人さんにこれを作りたいというのを見せるためのモックアップだけは自分で縫製します。

(写真:アズマ産業提供)

ーー生産も貴社で行っているのですか?

はい。原反で反物を買って、裁断し、物によっては印刷して、縫製をし、出荷する、という鞄作りの全ての工程が自社内で完結します。裁断は裁断屋さん、縫製は縫製屋さん、と分業していることが多いのですが、うちは全て自分で賄えています。

(写真:アズマ産業提供)

ーーTEAM BRIDGESTONE Cyclingにはいつからサポートいただいているのでしょうか?

浅田監督時代(1998ごろ)からです。

TEAM BRIDGESTONE Cycling 当時のチーム名はTEAM BRIDGESTONE ANCHOR)の選手がOS-500トラベルバッグ(輪行袋)を使ってくれていたことがきっかけとなりました。その選手を通じてオーストリッチを知ってくれた浅田監督自らうちの会社を訪ねてきてくれて、これをサポートしてくれないかという話になったんです。

その頃はヨーロッパ遠征が盛んだったので、使わない時はコンパクトにまとめられて、且つ頑丈な輪行バッグがセンセーショナルで使い勝手が良かった。ウレタンが入っているので衝撃に強く、使わない時には小さくなってかさばらないので重宝されたようです。

<写真:チームにサポートいただいていたOS-500トラベルバッグ(アズマ産業提供)>

ーー選手がオーストリッチさんのユーザーだったことから始まったのですね!

現役選手と一緒の目線で行うモノづくり

ーー今年からチームにサポートいただいている、POTARI フロントバッグライトXはどのような経緯で作られた商品なのですか?

ここ数年、コロナ禍で会社の経営は大打撃を受けました。お出掛けは出来ないし、飛行機にも乗れないので輪行は罪のような感じだった。看板商品の輪行袋が売れず、会社の売上も落ちていたのでどうにかしなくてはと当時は必死でした。

そんな時、通勤用のクロスバイクなどの自転車の売れ行きが良いと聞いたんです。通勤・通学時には必ずバッグが必要ですし、最近の人は"専用の"ものが好きだったりするので、自転車の鞄専門店としてその流れに乗って、なるべくコストを掛けずに作ろうと思い始めました。

(写真:POTARIフロントバッグライト Xを持つ伊美社長 )

そんな中、東京で雪が降った今年1月のとある日に、バーレーン・ヴィクトリアスに所属する新城幸也選手がうちに遊びに来てくれたんです。幸也君が鞄を作って欲しいということで、「じゃあ作ってあげるよ」、という話になった。そして彼のために作ったフロントバッグをTwitterに載せたらいい感じにバズったので、商品化することになったんです。

ーー選手やユーザーさんの声から商品開発や商品改善を行うことも多いのですね。

そうなんです。数ある自転車ショップの店長さんも、自転車を趣味でやっている頃からのうちのユーザーさんという事が多いんですよね。

ーー現役選手や監督、メカニックと一緒に商品開発をしているのがすごく素敵だなと思いました。(インタビューの前には意見交換会が行われていた)

(写真:OSTRICH×TEAM BRIDGESTONE Cyclingのオンライン意見交換会の様子)

やっぱり楽しいですよね。みんなが共通して好きな自転車の商品を作っているので、それぞれに自分が欲しいものを作りたいという熱量が高いので。

ーー選手たちも、自分の意見が反映された商品ができたら嬉しいですよね。

そうなんです。例えば、元々OS-500トラベルバッグには鞄の下側に、送り状や写真を入れるためのビニール部分があったんです。それを、ある選手の意見で上側につけて欲しいと言われて実際にそうしたらすごく喜ばれて。

<写真:OS-500トラベルバッグの商品改良前と改良後(アズマ産業提供)

その他にも、選手からの要望で、輪行中に周りの衝撃からファスナーが開いてしまい中の機材が傷つくことがないように、ファスナーのスライダー(引き手)を通常のものから南京錠のかけられる輪っかタイプのものに改良したこともあります。

<写真:ファスナー改良前(左)と改良後(右)(アズマ産業提供)>

ーー商品改良は頻繁にされるのですか?

1、2年のスパンで変わっているものもあります。自分で使ってから製品にすることが多いのですが、全部の商品を使い切れるわけではないので、ユーザーさんや販売店さんに使ってもらって、いただいた意見から商品を改善していく事が多いです。

ーー今回のように、TEAM BRIDGESTONE Cyclingとも商品に関する意見交換会は定期的に行っているのですか?

こういった意見交換会は初めてですが、年に一度会社に訪問してもらった時や、サイクルモードなどの自転車イベントで出店している際に、来場した選手から意見をもらったりもします。TEAM BRIDGESTONE Cyclingの選手はいつも誰かがブースに寄ってくれるので、嬉しいです。

(徳田優選手Twitter引用:特別にチームカラーで作っていただいているPOTARIフロントバッグライト X

ーーTEAM BRIDGESTONE Cyclingのチームの印象はありますか?

堅いイメージはありますよね。(笑)母体が大きな会社なのでしっかりとしている印象はあります。

ーー真面目な選手が多いですよね。最後に、今一押しの商品はありますか?

スマホケースです。財布とスマホが一体化したようなもので、サイクリストのウェアの後ろのポケットに入るサイズです。

スマートフォンの画面がそのまま操作できるようにビニールのフィルムになっています。中に、カードや小さいお財布が入りますし、Wサイズでチャックが二つついているもの(スマホケースW ダブル)には消毒やティッシュなども入ります。

このスマホケースは、沢田選手や徳田選手も気に入ってくれています。

ーーなるべく持ち物を減らしたい、サイクリストにとっては絶対に嬉しいアイテムですね。伊美社長、いつもサポート本当にありがとうございます。素敵なお時間をありがとうございました!

伊美社長も仰っていた通り、OSTRICH×TEAM BRIDGESTONE Cyclingの意見交換会ではみんなが目をキラキラさせて「ここはこうした方がいいのではないか」、「こうしたらもっと使いやすいのでは」と盛んに意見が交わされていました。

そんな自転車愛の強いコミュニティから生み出される商品だからこそ、長年サイクリスト達に愛され続けているブランドなのだなと改めて感じました。

伊美社長の気さくなお人柄も感じられるTwitterやInstagram、そして最近リニューアルした公式HPもぜひチェックして下さい。

▼オーストリッチ /アズマ産業株式会社

Twitter: https://twitter.com/OSTRICH_azuma_?s=20&t=nrGEWH7tbehlOxN1JUxaTQ
Instagram: https://www.instagram.com/ostrichbicyclebags/
公式HP: https://ostrich-az.com/

Interview&Text: Lynn Watanabe

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