【2022トラック世界選/スクラッチ銀メダル】窪木一茂インタビュー・ここで満足してはいけないという気持ちが成長の糧

10月12日~16日にフランスで開催された世界選手権。今年の世界選手権は直接パリ2024オリンピックの選考には関わりませんが、オリンピックランキングに一番配分の高い2023年の世界選手権への出場に大きく影響し、現時点での日本の実力を把握するためにも非常に重要な大会となります。

窪木一茂選手のスクラッチでの銀メダル獲得や今村駿介選手のオムニアム6位、松田祥位選手の個人パシュート日本記録樹立など大きな収穫のあった大会となりました。

今回の世界選手権について、参加した6名の選手にそれぞれインタビューを行いました。10月31日から連続でお届けしています。

最終日の本日はチームキャプテン、スクラッチで日本史上初の快挙となる銀メダルを獲得した窪木一茂選手です。

2022 TISSOT UCI TRACK WORLD CHAMPIONSHIPS

<大会概要>

開催日:2022年10月12日〜10月16日

開催地:フランス・サン=カンタン=アン=イヴリーヌ

出場選手:窪木一茂、橋本英也、今村駿介、松田祥位、兒島直樹、太田りゆ

詳細:https://www.uci.org/competition-hub/2022-tissot-uci-track-world-championships/6khkwJ4Xq1HTo12iHGn8QU

https://www.tissottiming.com/2022/ctrwch

<窪木一茂 リザルト>

スクラッチ 2位
マディソン 7位
チームパシュート 9位(タイム:3分53秒494)

ここで満足していてはいけないという気持ちが成長の糧

ーー銀メダル、本当におめでとうございます。去年の5位から今年は2位とメダルが取れるまでになった一番の理由は何ですか?

ありがとうございます。

​​去年はチャンピオンズリーグなんかにも参加していましたし、トレーニングは毎年ある程度の範囲で同じことが多いので、経験で補えた部分が結果に出たのかなと思いますね。

ただ、正直まだまだ普段のトレーニングをやり込んでるとは思っていなくて。もっと頑張らなくちゃいけないといつも思ってます。

ーースクラッチは最後のスプリントでどういう展開を考えて走っていましたか?

たまたまフランスの選手の後ろに入れたのでこのフランスの選手の後ろで攻撃をしていくか、残り1周半か2周のところでカナダの選手が後ろから来る前に自分からスプリントをして逃げ切るかのどちらにするかと考えながら走っていました。

結果的に1つ目を選んだ。自分で取りに行けなかったので(1位ではなく)2位だったのかなと思います。

ーーでは来年一位を狙って行くには自分から仕掛けないとということでしょうか。

そう思います。

ーー60周回(15km)と最後の勝負のスプリントまでも長いと思うのですが、何に気をつけて走っていますか?

トラック競技のロードレースと言われてるぐらいなので、"抜け出す選手がいないか"や"周りに強い選手がいいてくれてるか"ですね。あまりリザルトが残ってない弱い選手の近くに居てしまうと集団が割れた時に戻れずに途中で終わってしまうことが多いので。ロードレースの経験が全てかなという競技ですね。ロードの経験が今回も役に立ちました。

ーーチームパシュートは、ギリギリで予選落ちでした。今回感触としてはいかがでしたか。

もう少しやれたかなというのあります。(予選通過まで)タイム的にはあと1秒程だったので、力を出し切れず悔しいです。

ーー日本記録(3分52秒956)を出した2020年と比べると今回はどうでしたか?

絶対に日本記録を出すという自信に溢れてたし、(日本記録を出した時も走っていますが、)今の方が上の次元にいるという風に思いました。

ーーまたこれからトレーニングを積んで、という形ですかね。

そうですね。ただ2019年の時は予選1位の国とのタイム差が8秒ありましたが、今回は5秒差(予選1位のイギリスとの差が5秒402)に納めることができた。これは今回の収穫ですし、プラスに考えて良いというのは終わった後に皆とも話しました。

ーー今村選手とのマディソンはどんな作戦でした?

「ネイションズカップのグラスゴーで銀メダルを取った時よりは積極的に行こう」と話していました。ただ、思ってたよりもペースが早く、位置取りも激戦化していて。

ポイント周回の鐘がなる前に今村くんにパスをするというのが僕の役割だったんですが残り4周の時からもう速いんですよね。ラップするという頭もありますから、ここで全開で行ったら残れないだろうなと思って。

これはダメだと思って、待つ待つ待つという展開で、今村選手とも「足溜めていこう」と毎交代言ってたぐらいでした。そのままズルズルズルズル周回を重ねてきてしまって。

100周を切ってから、ようやくワンラップして2位上がれたけど、もっと体力が削れる前に攻撃をして、早めに優位に立てていたらよかったなって思う部分はあります。

あと個人的には自転車のギアをもう1枚上げれば、もっといいレースができたのかなと思います。来年はもう一枚ギアをかけて走れるような脚力を身につければ勝負できる気がしています。

ーー競合が集まる中で単独でラップしたというのは自信になったのではないですか?

僕らは下位にいたので、他のチームもまあいいだろうって許してくれた部分はあると思うんが、その中でも中盤以降にワンラップできたことは自信になりましたし、結構すぐに追いついちゃったのでそこまできつい感じじゃなかったんですよね。

ただ、走り方が下手くそなので、なかなか前に上がれなくて。前に上がれていれば、 イギリスやベルギーについていけて、大チャンスってのがあったのかなと思うんですが...。そこは経験不足を感じました。

ーー走り方というのはどういった部分なんですか。

色んなチームが前で投げて交代していくんですよね。それを外側を通って抜かすというのが、 暗黙の了解としてある。"外回れば危なくないよ"っていう。

けど、ヨーロッパの選手は慣れてるから、内側から行っちゃうんですよ。内側をひゅひって。近道なんです。これで相当変わるんですよね。内側から行くという概念がまず僕らにはなかったですね。

ーー今回の世界選手権を全体的に振り返って如何ですか?

もう33歳でベテランの域ですが、今までやってきたことの成果が出てメダルを獲得できたことは自信に繋がりましたし、今冬・来シーズンに今年以上の成績を残すためのモチベーションにもなりました。

ーー窪木選手が年齢を重ねても強くなっている秘訣はどこにあるのでしょう?

若手の選手が強くなってくることで、僕も負けず嫌いなところが刺激されて「僕も頑張ろう、ここで満足していてはいけない」という心構えや気持ちを強く持つことで成長できているのかなと思います。

ーー飛行機では何をしているのですか?

飛行機では全然寝られないので、映画を見まくる派です。映画は一度見たらもう見ない派なので、行きで全部見切ってしまって帰りは暇しちゃいましたね。(笑)

ーー遠征に持って行くものは?

スピーカーは持っていきますね。

2022トラック世界選手権渡航前の選手へのインタビュー記事はこちら

<関連記事>

Interview&Text: Lynn Watanabe Photo: JCF

最新記事

Article

前の記事へ 次の記事へ