全日本選手権トラック【初日・後編】男子チームパシュートで3年越しの日本記録更新!/Mr.エリミネーション、橋本がタイトル獲得

全日本選手権トラック【初日・後編】男子チームパシュートで3年越しの日本記録更新!/Mr.エリミネーション、橋本がタイトル獲得

◆ 日  程:2023年5月12日(金)〜5月15日(月)
◆ 大 会 名:第92回 全日本自転車競技選手権大会 トラックレース
◆ 開 催 地:静岡県伊豆市・伊豆ベロドローム
◆ 配信 https://www.youtube.com/live/l1QEvETSaCE

【男子チームパシュート】チームブリヂストンが3年越しで日本新記録!

◆ 日  程:2023年5月12日(金)
◆ 参加選手:
Aチーム:窪木一茂、橋本英也、今村駿介、松田祥位、兒島直樹
Bチーム:河野翔輝、山本哲夫、岡本勝哉、山下虎ノ亮

パリ2024オリンピックの出場国を取るために大事な種目であるチームパシュート。この種目での出場枠を獲得するのがチームブリヂストン選手の現在の目標です。
そのためにも、2020年2月の世界選手権でチームブリヂストン選手たちが樹立した日本記録の更新が求められてきました。それが今日、3年越しに実現されました。


Aチーム:兒島、窪木、松田、今村

チームパシュートは4名同時に出走し、250m x 16周=4kmの距離を走り、先頭3名のフィニッシュタイムで競います。
この全日本選手権のチームパシュートには、チームブリヂストンから2つのチームが出場しました。

一つはAチーム、現在日本ナショナルチームとしてオリンピック出場を目指す、チームの通称『ポディウム』チームです。彼らはアジアチャンピオンのジャージ、白っぽいジャージで走ります。

そしてもう一つがチーム4名の若手選手によるBチーム、通称『アカデミー』チームです。彼らは通常のチームジャージを着ています。


Bチーム:山本、山下、岡本、河野

Aチームは予選に松田、窪木、兒島、今村の順で出走。タイムは3分58秒代と、期待されていたタイムより遅いものとなりました。
選手たちに予選の走りを聞くと、各自さまざまな理由があったようですが、つまりはタイムが出るような走りで噛み合わせることができず。。。

とはいえ、両チームともに予選を突破。順位は1位にAチームで2位にBチーム。決勝は1・2位決定戦で、チームブリヂストン同士が対決します。


窪木、兒島、今村

Aチームは、次の決勝こそさらにタイムを伸ばしたい。チームキャプテンであり、これまでもチームパシュートでメンバーを鼓舞し続けてきた窪木は、決勝までの間にパシュートのチームメイトに声がけをし、計画を練り、そして記録更新への気持ちを、極限まで高めていました。

「僕らは挑戦しました。走ったこともない重いギアをかけて、みんな初めての恐怖と戦いました。『失敗してもいい』、『むしろ失敗しよう!』と」(窪木)

決勝の1・2位決定戦、兒島に代わり橋本が3走に入ったAチームとBチームが対面で走ります。
スタート後から周回を追うごとに、少しずつAチームが先行し、対戦相手Bチームとの差を詰めていきます。

連戦練磨のAチーム先輩たちに対するBチームは河野、山本、岡本、山下の4名。現役学生2名を含む呼び名通りのアカデミーです。
経験こそ少ないですが、走りの実力はしっかりと実証されてきたもの。この決勝での走りはなかなかにいい手応えを感じながら走っていたと口々に言います。


そのためか、2チームの差は縮まりながらも、Bチームは最終局面まで粘り続けます。
しかし残り3周でついに追い抜きを達成。記録更新を目指すAチームは勝利した後も止まらずそのまま走り続け、フィニッシュを迎えます。タイムは!?

3分52秒532! これまでの日本記録から0秒424を更新しました。全日本チャンピオンの称号の獲得はもちろん、これまで3年間叶わなかった日本新記録の達成です。


今村、窪木

「思い描いていたタイムと走りでした。ただ僕の体力は0になりました(笑)。だからこそこのタイムが出たのかなと思います」(窪木・2走)

「今日はあまり調子良くないかなと思っていたんですが、フタを開ければ脚もしっかり回りました。
決勝は3走を走りましたが、自分の番では、一番引けたんだじゃないかと思います」(橋本・3走)

「今回は(ナショナルチームのコーチではなく)自分たち5人で話し合って、ギアなども決めていきました。
でも予選は曖昧な感じで終わってしまい、いつもよりタイムも落としてしまいました。
ですから決勝では、中途半端は嫌だから思い切って行こうということで、いつもの感じでスタートできました。
こうやって記録を刻めるのは嬉しいですし、その記録更新に自分がいるというのが、今回の1番の喜びですね」(松田・1走)


今村、橋本、窪木、松田

という喜びの声が聞こえた中で、それでも自身を戒め、さらなる高みへの術を探すのが今村です。

「自分が2回目をしっかりと引けなかったのが、今一つタイムが伸び悩んだところだと思います。
もう少し伸びしろはあったかもしれない、もう少し牽引できる力をつけないといけないと感じました。

(Q:記録も出てハッピーなムードですが)自分としてはそんなに、という感じですね。毎回走るたびに改善すべきと頃は見えますし。
ただ止まっていたもの(記録)が更新できたのは、チーム全体としてもポジティブなことだし、強化が進んでいると感じます」(今村・4走)


兒島

そして予選には出場しましたが、決勝では橋本に出走を譲る形になった兒島。
「日本記録が出たので嬉しく思っています」とコメントしましたがその実、悔しかったことでしょう。
チーム若手の中でも頭ひとつ抜けた実力を示している兒島ですが、今回は勝利の嬉しさと走行できなかった悔しさを同時に味わうことになりました。


山本、岡本、山下、河野

そしてBチームはそれでも2位。途中でAチームに追い抜かれたためそこでレースは終了しましたが、それでも日本最強のメンバーを相手に最後までよく粘りました。
パリ2024オリンピックへの出場枠は、名実ともに最速なのを改めて示せたAチームが、アジア選手権・世界選手権とで好成績を残し、必ずや獲得することでしょう。

今まで出そうで出せなかった、強化は確実に進んでいるのに出しきれなかった新記録。
ついに実現できたチームブリヂストン。パリ2024オリンピック出場への道筋を照らす光は、またさらに明るくなったように感じます。

「3年間超えられなかった壁を越えられました。オリンピック出場に向け、さらに弾みをつけられればいいと思っています」(宮崎監督)

*男子チームパシュート リザルト
1 TEAM BRIDGESTONE Cycling A(窪木一茂、橋本英也、今村駿介、松田祥位)3:52.532
2 TEAM BRIDGESTONE Cycling B(山本哲夫、河野翔輝、岡本勝哉、山下虎ノ亮)OVT
3 CIEL BLEU KANOYA (原田裕成、冨尾大地、古谷田貴斗、津留崚)4:05.715


【男子エリミネーション】世界大会での優勝経験のある橋本が全日本も制覇

◆ 日  程:2023年5月12日(金)
◆ 参加選手: 窪木一茂、橋本英也、今村駿介、松田祥位、河野翔輝、兒島直樹

初日最後の種目となったエリミネーション。この種目を得意とするのが橋本です。
今年の世界大会ネイションズカップ第1戦では日本人として初めて優勝を飾りましたが、全日本選手権でもこの種目での勝負強さを存分に発揮して優勝しました。


橋本

エリミネーションは同時にスタートした選手たちから、2周ごとに最後尾の選手が除外(エリミネート)され、最後まで残った選手が優勝します。
オリンピック競技であるオムニアムの1種目でもあります。

チームから出場したのは6選手。スタート直後から彼ら6選手は基本的に前方に位置し、レース全体の流れを作っていきます。
もちろん互いにライバルですから、ロードレースのように協力し合うことはありません。
ただその中でも気心の知れたチームメイトの動きに合わせるかのように、チームブリヂストン選手たちは後方のエリミネートを避けていきます。


これはもう見たままで仕方ないのですが、地脚の強さかレース勘の鋭さか、チームブリヂストン選手以外の選手が少しずつ後方に下がっていきます。

チームブリヂストンの選手たちは基本的には前方に位置しながら速度の緩急をつけて集団を巧みに揺さぶります。
そんな中、橋本は後方に位置しながら他チームの選手をチェックし、確実にエリミネートさせる戦法を取りました。


そして終盤、河野が先に遅れ、窪木が除外され、松田、橋本、兒島、今村の4名が残ります。
いよいよ最終局面、4名は牽制することもなく速度を保ったままライバルとなったチームメイトを振り落としにかかります。


兒島、今村、橋本

まず松田が遅れてエリミネート。橋本、今村、兒島とオムニアムを得意とする3選手が残り、この3人からの最終のバトルへ、と思われた除外周回で「ドロー(引き分け)」の宣告、3人はそのまま次の除外周回へ。

ここで「実はこれで心が折れてしまって」とのちに声小さく述べた今村が、その次の除外周回でエリミネート。
残りは橋本と兒島だっ、とその瞬間、兒島が橋本の後輪に接触して転倒。最終除外周回での転倒はそのまま続行されるというルールのため、転ばず走り続けた橋本の優勝となりました。


橋本

しっかりとした勝負にはならず残念でしたが、終始優位にレースを動かしていた橋本、この種目での勝負強さを存分に見せました。

「レースを全体的に見ながら走れたんで、良かったんじゃないかと思います。
ラストに向けて足を温存しつつ、。余裕を持って走れましたし、いいポジションで行けたので良かったです。

最後に兒島くんに当たってしまったのが申し訳ないなと思っています。。。
やはり最後は2人でしっかりとバトルをして優勝したかったなと思います」(橋本)

*男子エリミネーション リザルト
1 橋本英也 TEAM BRIDGESTONE Cycling
2 兒島直樹 TEAM BRIDGESTONE Cycling
3 今村駿介TEAM BRIDGESTONE Cycling


兒島、今村、橋本

全日本選手権トラックは続きます。

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