全日本選手権トラック【2日目・後編】男子マディソンは窪木・今村ペアが世界レベルの走りで勝利/男子スクラッチで河野が放った渾身の最終アタック、それを覆した橋本が勝利
全日本選手権トラック【2日目・後編】男子マディソンは窪木・今村ペアが世界レベルの走りで勝利/男子スクラッチで河野が放った渾身の最終アタック、それを覆した橋本が勝利
◆ 日 程:2023年5月12日(金)〜5月15日(月)
◆ 大 会 名:第92回 全日本自転車競技選手権大会 トラックレース
◆ 開 催 地:静岡県伊豆市・伊豆ベロドローム
【男子マディソン】世界レースでの金メダルを狙える圧倒的な走りで窪木・今村が勝利
◆ 日 程:2023年5月13日(土)
◆ 参加選手:
Aチーム:窪木一茂・今村駿介
Bチーム:橋本英也・山下虎ノ亮
Cチーム:兒島直樹・岡本克也
Dチーム:河野翔輝・松田祥位
Aチーム:窪木、今村
オリンピック種目であるマディソン。全日本選手権でのこの種目を圧倒的な強さで勝利したのが窪木・今村ペアでした。
先のネイションズカップでは、窪木が落車に見舞われながらも5位を獲得できる力を持つこの2人。日本ではなかなか開催機会の少ないマディソンでの実力を、支配的とも言える形で披露できました。
マディソンは選手2人がペアを組み、交代しながら10周に1回あるポイント周回での着順で得られるポイント(1位=5点、2位=3点、3位=2点、4位=1点/最終周回は倍の点数)合計を競います。
チームブリヂストンがパリ2024オリンピックでのメダルを狙い、注力する種目。交代の時のタッチで、交代相手の手を繋いで加速させる『ハンドスリング』での高い速度が魅力のレースです。
上左から:B)橋本、山下、A)窪木、今村
D)河野、松田、C)岡本、兒島
そして今回、チームブリヂストンはマディソン参戦のため特別に3種のウェアを着用しました。というのもここ数年、チームブリヂストンで数チームがエントリーする状況が増え、走る選手たちでさえ、自分のペアを見つけるのに苦労していたからです。
そこでチームウェアをご提供いただくウエイブワンさんご協力のもと、チームブリヂストンのデザインを踏襲しつつ赤と黒、黄色の3パターンを用意。これで、アジアチャンピオンである窪木・今村の白基調ウェアの4色で、見分けやすくなりました。これで選手たちが競技に集中できたのはもちろん、観客も見分けやすく展開もわかりやすくなったと評判でした。結構かわいい❤️という声も。
岡本、窪木
レースは序盤から窪木・今村ペアが1位ポイントを連続で獲得。「(全て1位ポイントを獲得する)パーフェクトな結果を目標としています」(今村)という、実績に裏付けられた自信と共に、その言葉通りに進めます。
その2人を追うのが、チームブリヂストンの3チーム。3チームともこの大会のためにペアを組んだいわば即席チームですが、そこは実力ある選手たち、それぞれの強みを活かした強さのチームとなりました。
その結果、レースの後半にはチームブリヂストンの4チームが上位を独占。最終ポイント周回である全120周のフィニッシュラインまでに、1位のアジアチャンプ・ペアは2位以下に大きく差を開き、その2位を3チームがほぼ同点で争うという熾烈な2位争いとなりました。最終周回での着順が、2〜4位の順位を決めるという状況です。
Dチーム:松田、河野
残り10周で仕掛けたのがDチームの河野・松田ペア。気心の知れた以心伝心系ペアとも言える2人、最終周回を取るべく前を走る窪木・今村ペアを追いながら前に出ます。
それを見た他の2チームが、後ろからも追い上げ、最終周回に向かって一段を速度は上がっていきます。
Bチーム:橋本、山下
その最終周回での順位争いに奮起したのが橋本・岡本ペアでした。後方からスッと上がってきて、残り3周を切った時点で先頭に飛び出し、そのまま全力でトップスピードに。
橋本の速さは最後まで緩まず、その最終周回を勝ち取って2位となりました。優勝は、まさに世界の走りを見せた窪木・今村ペアでした。
Aチーム:窪木、今村
「パーフェクトしないといけないぐらいなので、よくないですよね」という今村。「でも大切な1レース1レースで、どのレースでも作戦を練って、普段できなかったところ、前回できなかったところを話し合って、次のレースはどうしようと決めてやっているので。見てもらえる機会にジャージを着て勝つ、というのが大事かなと思います」(今村)
Aチーム:今村、窪木
「世界を見据えて、走ろうということを話し合って走りました。2人とも普段より重いギアを使って負荷をかけて走る、それで勝てたのは良かったと思います。
全日本選手権は、毎年レベルが上がっていると思います。海外のネイションズカップでも成績を出せるようになったのは、コツコツをミーティングを重ねてきたその結果だと思います。今シーズンのネイションズカップは、メダルを狙えていたので自信になりましたし、さらに練習を積んでいきたいと思います」(窪木)
結果、マディソンでは表彰台を独占できたチームブリヂストン。窪木の言う通りにマディソンの競技レベルは年々上がっています。それを牽引する2人のマディソンでの走り、金メダルを狙えるチームブリヂストンの走りを見られる機会を、今後も逃さず注目です。
*男子マディソン リザルト
1 TEAM BRIDGESTONE Cycling A (窪木一茂・今村駿介)57
2 TEAM BRIDGESTONE Cycling B (橋本英也・山下虎ノ亮)30
3 TEAM BRIDGESTONE Cycling D (河野翔輝・松田祥位)25
4 TEAM BRIDGESTONE Cycling C (兒島直樹・岡本克也)21
【男子スクラッチ】最後7周で飛び出した前年度チャンプの河野、その逃げ切りを制したのが今大会絶好調の橋本
◆ 日 程:2023年5月13日(土)
◆ 参加選手:窪木一茂、橋本英也、今村駿介、山本哲夫、兒島直樹、河野翔輝、松田祥位
橋本
チームブリヂストン選手たちが、互いをライバルとして競い合った個人中距離レース、スクラッチ種目で、橋本英也が勝利しました。
レース終盤で飛び出した、この種目の前年度勝者である河野、昨年と同じ最終局面からの1人逃げで再び勝利を狙います。しかしそれを阻止したのがチームの先輩たち。中でも今大会で脚が回っている橋本が河野を抜き去りそのまま先頭でフィニッシュするという劇的な結末となりました。
橋本、窪木、山本、今村、兒島
スクラッチとは、トラック競技フォーマットで行うロードレースのようなもの。参加選手が同時にスタートし、最初にフィニッシュした選手が優勝というシンプルかつ王道のルールを持つ中距離種目です。
このレースを積極的に作っていったのは、チームブリヂストンの窪木、橋本、今村の3選手。高い平均速度を持つ彼らに対し他の選手、他のチームが着いていく形でレースが進みました。
そんな中、山本が前半にラップを狙い飛び出したのを初め、それぞれの選手がそれぞれのプランを実行し、自身のチャンスを試しましたが、前述3選手の速さに制されていきました。
山本
一方、あまり目立った動きを見せず、後方に位置していた河野。彼は昨年のこの種目で、最終局面に牽制を始めて速度を落として集団を出し抜くように抜け出し勝利しています。
今年もその動きを狙っているのか、周回遅れとなるリスクも背負い、後ろでの位置取りを続けてチャンスを伺います。
窪木、河野
120周、全30kmのレースで残り10周弱。優勝を狙うチームブリヂストン選手を中心とした集団は、フィニッシュスプリントに向けた牽制を始め、速度が落ちていきます。残り7周、ここでやはり、あるいは、なんと、河野が1人抜け出しました。
「残り7周、周りは速度が落ちている、ここでやらないと勝てない、男じゃないと思って」(河野)
全開で逃げる河野。その逃げを容認した集団は残り4周ほどを安定した速度で走ります。力を尽くし、そのために疲れていくのが見て取れる河野に対し、恐ろしいほどに静かに、しかし迫力を持って河野に迫る後方集団。これもあたかもロードレースの最終局面のような展開、昨年と同じ展開です。
河野
そして残り2周強を残し、集団はついに河野を吸収、その集団の先頭に出たのが橋本でした。橋本はそのままの速度をキープ、しかも後ろをさらに引き離すほどの速度でフィニッシュへ向かいます。そこに挑んだ窪木、フィニッシュラインに向け最終コーナーから追い上げますが、先行したのは橋本。この種目での勝利をものとしました。
「河野は積極的に動いていて良かったですよ。やはり去年のチャンピオンだったんで『いい場所を知っているな』という良いアタックでした。ただラストは、僕はゴール勝負を前提で組み立てていたので、予想通りの展開ではありましたね。自信を持ってこの展開を組み立てられたので、ほぼパーフェクトな展開ではあったと思います。今村も窪木さんも積極的に動いていて、良いレースになりました」(橋本)
見ていても、とても面白いレース展開となったスクラッチ。シンプルなルールであるがために選手それぞれの想いと動きが錯綜し、かえって複雑に絡み合っていった展開となりました。ロードレースでは絶対に見られないチームブリヂストン選手同士のロードレース、それがスクラッチ。そんな印象を残したレースでした。
窪木、橋本、今村
*男子スクラッチ リザルト
1 橋本英也 TEAM BRIDGESTONE Cycling
2 窪木一茂 TEAM BRIDGESTONE Cycling
3 今村駿介 TEAM BRIDGESTONE Cycling
4 松田祥位 TEAM BRIDGESTONE Cycling
5 兒島直樹 TEAM BRIDGESTONE Cycling
7 河野翔輝 TEAM BRIDGESTONE Cycling
9 山本哲夫 TEAM BRIDGESTONE Cycling
橋本
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