全日本選手権トラック【３日目・後編】女子ケイリン・太田が善戦するも最後にまくられ2位に／男子ケイリン・新山が先行するも力及ばず3位

◆ 日　 程：2023年5月12日（金）〜5月15日（月）
◆ 大 会 名：第92回 全日本自転車競技選手権大会 トラックレース
◆ 開 催 地：静岡県伊豆市・伊豆ベロドローム

脇本、新山

【女子ケイリン】

◆ 日　 程：2023年5月14日（日）
◆ 参加選手：太田りゆ

日本の競輪に端を発するケイリン競技。トラック6周の距離を７名までの選手が同時出走で競います。3周までは先導員であるペーサーが風除けとなって全体を引き、残りの3周が本格的な勝負となります。

女子ケイリンには、着実に力と技術を積み上げ続けている太田りゆが出場。出場人数の都合で今大会では決勝のみの一本勝負でした。

ペーサーの3周を２番手につけた太田、残り1周半から少しずつペースを上げて、最終コーナーを前に先行、早めに仕掛けてそのまま逃げ切りを狙います。

自身の中でのベストなラインを取り、己の力を信じてあとは踏み切るだけ、という状況にまで持ち込んだ太田。独特の低い姿勢でひたすらにペダルを踏み込みます。

しかしその太田を最終コーナーの外から佐藤水菜選手（Team Rakuten K Dreams）が追い上げ、まくっていきます。太田は最後の最後まで粘りましたが、フィニッシュラインを先に超えたのは佐藤選手でした。太田は2位となりました。

「やれるだけのことはやって、タイミングも悪くなかったので、後悔のないレースでした。中途半端な仕掛けとかもなかったので、これまでとは違う気持ちでレースできたと思います」（太田）

その通り、自分ができることを尽くした太田。残念ながら踏み勝つことはできませんでしたが、それもまた一つのバネの縮みのようなもの。大きな飛躍の前段階であることでしょう。

「アジア選手権でのケイリンの出場はまだ決まっていないのですが、出番が来たらしっかりできるようにしたいと思います」（太田）

＊女子ケイリン　リザルト
1 佐藤 水菜（Team Rakuten K Dreams）
2 太田りゆ（TEAM BRIDGESTONE Cycling）
3 梅川風子（Team Rakuten K Dreams）

【男子ケイリン】

◆ 日　 程：2023年5月14日（日）
◆ 参加選手：脇本雄太、新山響平

男子ケイリンには脇本と新山が参加。2人とも現役の競輪選手ではありますが、競輪とケイリンは似たルールの異なる競技。利用するトラックの距離も形状も異なります。

2人は世界レベルのケイリン競技から現在は身を引いているため、久しぶりのケイリン出走となります。その中で、どこまで善戦できるかという勝負です。

脇本

ケイリン1回戦は両名とも、定石通りの危なげない走りで1位通過。2回戦に駒を進めましたが、このヒートでの組み合わせでは、脇本、新山が共に出走。このヒートから3名が決勝に進出します。

スタートから新山、脇本の順に前を固め、最終周回を前に新山は３番手に、脇本は最後尾に下がります。

そして勝負の最終周回。新山は先行する2名の選手へと外から仕掛けて最終コーナーを前に見事にまくり、最後尾からの力強い加速でグイグイと前に出てきた脇本は、新山のさらに外側から加速を続け、ゴール直前で差し切って2位に。

脇本、新山の両名が進んだ決勝。ペーサーが先導する間に脇本は３番手、新山が最後尾につけて残り3周。最後尾からじわじわと新山が加速します。そのトルクフルかつ加速度の高い踏み出しで、新山は残り2周で先頭に出ます。

さあここから新山は力勝負です。「自分の力を出し切って終わりたかったので前で踏みました」という新山は、その言葉通りに全力で踏み続けました。しかし新山の後ろにぴたりとつけていた太田海也選手（Team Rakuten K Dreams）がバックストレートで新山を抜き去り前に。

その着順を守りたかった新山ですが、最終コーナーでさらに外側からの中野慎詞選手（Team Rakuten K Dreams）の速度に対抗できず、惜しくも3位に。

脇本は持ち味の後ろから一気にまくりあげる戦法で望みましたが、最終コーナー直前に先行する選手が蛇行し、それを避けるために大きく失速。このレースを最後尾で終わりました。

脇本、新山

新山

「ケイリンはメダルを取ったことがなかったので、3位を取れてよかったです。

（世界ケイリン競技から引いた）今は、純粋なレースの楽しさを味わっています。力も出し切れてますし、レースも自分で考えて動け、やりたいことができています。今日は充実したいいレースでした。長い距離を踏んだので、イッパイイッパイでしたし、よく３着まで残してくれましたね、みんな優しいです（笑）」（新山）

この『新山スマイル』と鋭い加速のペダリングとのギャップが新山の魅力の一つです。また世界ケイリンの舞台を目指し戦う新山の姿を、心待ちにしています。

新山

＊男子ケイリン　リザルト
1 太田海也（Team Rakuten K Dreams）
2 中野慎詞（Team Rakuten K Dreams）
3 新山響平（TEAM BRIDGESTONE Cycling）
5 脇本雄太（TEAM BRIDGESTONE Cycling）