【長迫吉拓インタビュー】来年のパリ2024が「最後のオリンピック」

長迫吉拓インタビュー】来年のパリ2024が「最後のオリンピック」

いよいよ来週14日に迫ったトラックアジア選手権。その開催を前に、今年から新たにチームブリヂストンサイクリングに加わったニューフェイス、長迫吉拓(ながさこ・よしたく)選手を今一度ご紹介いたします。

チームへの加入は今シーズンからの長迫ですが、すでに自転車歴25年のベテラン選手です。4歳からBMXに乗り始め、BMXのトップライダーとしてリオ2016オリンピック、2021年の東京2020オリンピックの二大会に出場しています。トラック競技に本格的に転向してからは、チームスプリントの一走としても頭角を現し、今年のネイションズカップ第二戦では3位表彰台に上りました。

今回は長迫選手へ、1)三度目のオリンピックに懸ける思い、2)BMXとチームスプリント一走の共通点、3)本番で練習以上のパフォーマンスを出せる理由、そして4)オリンピックへのロードマップ上にあるアジア選手権の4点について話を聞きました。このインタビューで感じたのは、自分の築き上げた自転車競技への哲学を淡々と実践する意志の強さでした。

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来年のパリが、「最後のオリンピック」

ーーBMXの日本代表として二回のオリンピックを経験した後に、今度はトラック競技でパリ五輪を目指すことに決めたのはなぜなのでしょうか。

前回の東京オリンピックのために出来ることは全部やりました。が、結果的にあと1ポイントで準決勝に進むことができなかった。レースが終わった瞬間に、僕の競技人生は終わったんだなと感じました。

でもやっぱり、メダルを取って終わりたい。とにかく何の競技でもいいからオリンピックでメダルを取りたいという気持ちが収まらなかった。年齢的にも、次のパリが最後の挑戦になるだろうし、今まで手に入れられなかったメダルを手に入れたい。

そう思ったときに自分の中の選択肢としてメダルへの可能性が一番高いのがトラック競技でした。もう時間がないからケイリンやスプリントは出来ない。やるならBMXで培ったゼロ発進のスピードを活かせるチームスプリントの一走だなと思って。

東京が1年延期になったのでパリまでは(通常より1年短い)3年。自分のモチベーションが続くかなという心配もありましたが、3年なら高いモチベーションでやれると思い、決断しました。

ーーオリンピックに出場した人しかわからない、人をそこまで夢中にさせるオリンピックの魅力とは何なのでしょう。

どれだけ本気で向き合ってきたか、ということが1日で分かってしまう。もちろんラッキーもあるだろうけれど、そのラッキーを手にできるのもその人の実力ですし。4年間積み上げてきたものが1日で試される、切なさもあるのかもしれないですけど、その特別な一日に4年間かけることに惹かれているのだと思います。

ゼロ発信からトップスピードへ BMXとチームスプリント一走の共通点

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ーーBMXとトラック競技のチームスプリントの一走は、どのような共通点があるのでしょうか。

立ち漕ぎのゼロスタートでどれだけ早くトップスピードに乗せられるかというところが似ています。今までBMXでやってきたことが活きているという感じます。

ーー個人種目と団体種目という違いもあるかと思います。団体種目の難しさを感じた点はありますか?

BMXは個人競技だったので失敗しても全部自分の問題でしたが、チーム競技になると自分だけの失敗ではなくなったからこそ、トレーニングを中途半端にできないと思うようになりました。自分が更に頑張っていかないと他の2人にも示しがつかないですし、意識も高くなったと思います。

ーーチームスプリントは太田海也選手、小原佑太選手と3人でチームを編成することが多いですがチームワークなどで変化はありましたか?

オリンピックでのメダル獲得を狙える位置に来たということをタイムや結果的にも実感しています。そのことがチームにとって良いモチベーションにつながっていますし、チームスプリント以外のナショナルチームメンバーたちにも刺激になっていると思うのでチーム全体として良い流れができているなと感じます。

本番の緊張感をプラスのエネルギーに変える

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ーー本格的な競技転向から3年で世界の舞台でメダルを獲得できた要因は何が一番大きいでしょうか。

オリンピックに出たこともありますし、今まで高いレベルでレースをしていたのでレースに対する強い気持ちの部分が強いと思います。

一番悪いのが、練習では良くてレースではダメということなのですが、練習以上のパフォーマンスが本番で出せているので、それは今までBMXをやってきたことが良かったなと思っています。

ーー練習以上のパフォーマンスを本番で出すというのは常人が想像する以上に難しいことだと思います。それを実現できているのは経験からくるものが大きいのでしょうか。

やはり、特別な大会の特別な瞬間にはその場にしかないエネルギーがあると思うので、その雰囲気をしっかり楽しむこと。緊張に押しつぶされるという人もいると思うのですが、その緊張のエネルギーを逆にプラスに変えていくことができればさらに力強い走りが出来ると思います。

日々の練習でも本番に近いような気持ちで高い緊張感を持って自分にその緊張感を慣れさせておくことでそれが実現出来ているのかなと思います。僕の場合は練習が一つの安心材料になっていて、練習である程度のタイムが出せていれば本番ではさらに良いタイムが出るということがわかります。

アジア選手権、中国は絶対に勝たなくてはならない相手

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(脇本、長迫)

ーーいよいよアジア選手権が始まります。目標を教えてください。

優勝ですね。あくまでアジア選手権は8月の世界選手権への通過点ですが、いつものパフォーマンスを出すことができれば日本記録更新、そして金メダル獲得もかなり現実的だと思います。

ーー今回一番のライバルとなる国はどこですか?

中国が一番のライバルになると思います。今年のネイションズカップ第一戦、第二戦を見てもタイム的には負けていないので、今回は絶対に勝たなくてはいけない相手だと思っています。

ーー目標としているタイムを教えてください。

自分の一走のタイムとしては17秒3が出せれば嬉しいなと思います。

ーーアジア選手権で特に意識していることはありますか?

会場となるマレーシアのバンクは以前に一度走ったことがあり、かなりタイムの出やすいバンクで感触の良いことは知っています。ただ、普段使っているスタートの発送機とは違うので、その点にしっかり対応できるかというのは僕の課題ですね。

いよいよ6月14日(水)から6日間に渡り開催されるアジア選手権長迫選手、チームの応援をよろしくお願いいたします。


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