【2023世界選トラックがんばれ】窪木一茂インタビュー『ハングリーな生き方』
【2023世界選トラックがんばれ】窪木一茂インタビュー『ハングリーな生き方』
これまで自転車競技の頂点とも言える場所に多く身を置き、しかし常にその場にとどまらず疾走り続ける唯一無二の自転車選手。
それがチームブリヂストン サイクリングのチームキャプテン、窪木一茂です。
2015年・ロード全日本タイトル獲得
2016年・リオ2016オリンピック男子オムニアム出場、欧州プロコンチネンタルチーム所属
2018年・チームブリヂストンサイクリング加入、ロードTT全日本タイトル獲得、トラック中距離タイトル5冠
2020年・競輪選手養成所~競輪選手に
2022年・トラック世界選手権スクラッチ銀メダル
2023年・チームパシュート、マディソン、スクラッチ、個人パシュートで世界選手権出場(予定)
チームワークを引き上げるそのフィジカルの強さは、日本トラック中長距離の司令塔ならではの実力です。
チーム入りの前は海外ロードチームに所属しながらトラックでリオ2016オリンピックに出場。
チームブリヂストン・アスリートとなる前からもなってからも、その公式ブログタイトル通り『ハングリーに生きたい』キャプテン窪木。
大事な2023トラック世界選手権を前に、2018年のチームブリヂストン入りからここまでを振り返ります。
photos:JCF, Team CAMERA
(2023 ツアー・オブ・ジャパン)
ーー2018年にチーム加入し、その年はロードレーサーとして、窪木選手は快進撃でした。
東京オリンピックを目指すために日本に帰ってきました。
それまでは海外チームのロードレーサーとして走っていて、ずっとヨーロッパにいるつもりで、心を決めていたので。
リオ2016オリンピックの時に使ったトラックの機材は全部処分していました。
ヨーロッパで走っていてダメだった部分を改善して、東京オリンピックに繋げることを考えて。
ロードからトラックに、っていう形で、オリンピックを目指す体への改革を努めていました。
ロードで結果が出せたのは、日本に帰国するのは東京オリンピックのためだと割り切っていたので、出るタイトルは全部獲った方がいいと思っていました。
それにプロスポーツはがんばった分だけ評価されるものだと思っているので、全部がんばっていました。
(今村、窪木/2023全日本選手権トラック)
ーーその頃からロードでは、窪木選手と今村選手という2トップの感じが作られましたが、窪木選手からも色々とアドバイスもしていましたか? またそれについてどう感じていましたか?
最初は、ライバルが増えるから、教えようか悩んでいました。
ですけど、チームパシュートでオリンピックを目指すとなっても、強い選手がいなければ無理です。
スポーツマンシップ的にも強い選手がいた方がいいと思ったので、色々情報を共有し合っていきました。
ですから今村選手が強くなったのは「やっぱりね」って思いますし、嬉しいことです。
今では、マディソンという種目で一緒にメダルを目指すペアなので、良かったなとも思います。
(2023全日本選手権トラック)
ーー窪木選手のキャリアの中で、一番興味深いのが2020年の競輪選手養成所入りです。どのタイミングで行こうと決めました?
2020年3月に世界選手権で、3月末に決めて、5月から入所しました。
というのも、2020年の世界選手権ではオムニアムを英也(橋本英也選手)が走りましたし、オリンピック代表候補も英也になる、と思いました。
元々競輪選手になるという願望はあったんです。その年が競輪の特別推薦で入れる最後の一年でした。
ですから競輪選手養成所に行って、それまでに短距離チームをブラッシュアップしてきたプログラムも身近で習得でき、競輪選手の資格も取れる。
強くなる上で肉体的にも精神的にもマイナス要素はひとつもなかった。それでオリンピックに選ばれるものなら、全部取りできると思ったんです。
だって、僕は昔からそうだったから。
3月末に決めて、4月末に試験して4月16日くらいに試験して。
養成所にいる時間はもちろん割り切って、スプリントを磨くこともできました。
そしてこの期間、この僕の行動を認めてくれたチームブリヂストンサイクリングにとても感謝しています。
この養成所にいる期間の中でもチーム員としての契約を続けてくれたのは、今も感謝しきれないぐらいです。
1年を養成所で過ごして、出てからもメンバーとして迎えてくれたチームには、またロードレースでの勝利を早い段階で届けられてホッとしました。
また、今年のツアー・オブ・ジャパンの東京ステージで優勝できたのも、戻れるチームがあり、応援してくれているブリヂストンサイクルのみなさんへの感謝をカタチにしなくちゃ、と思ってがんばれたのが、とても大きかったと思っています。
(2022世界選手権トラック・スクラッチ表彰式)
ーーそして去年の世界選手権のスクラッチで銀メダルを獲得。そのためにS級に昇格できたという展開に。
学校の先生には、窪木らしいって言われました。結果、1年半でS級に上がれて、予定していた目標通りで良かったです。
ただ、チャレンジ、A2、A1上がって、S級になるまで2レースしか走っていません。
だから全然、競輪選手だなんて言えません。デビューしていきなりS級って感じです。
嬉しいんですけど、慣れるのに必死でした。今も、競輪のイロハを全然わかっていないです(笑)。
話はズレますけど、僕は競輪という媒体を使って、ロードの強化をどんどん回していきたいと思っています。
もちろんトラックでもいいんですけど、やっぱり僕が育った環境って、ロードレースが基本ですから。
僕がうまく競輪で結果を残せて上に行けたとしたら、そのことで、よりロードがフォーカスされていく。
その循環は絶対忘れずにいたいというのが、いつも心にあります。
(2023全日本選手権トラック)
ーー2018年にチームに入ってから今まで、自分はどう変わっていったと感じていますか?
当時は、完全に片道切符でヨーロッパに行った身でいました。
2018年に帰ってきて、ここで費やす時間が増えてきたことで、やっぱり「住めば都」で、どんどん住みやすく、パフォーマンスも発揮しやすくなってきています。
今ある環境や、トレーニングのシステムがすごく整っているから、というところもあります。
ただ僕自身としては、選手である以上、楽しいことよりも勝つことの方が大事だと思っていますから、そこはブレないですね。
やるからには一番目指して、目指せなくなったら辞めた方がいいと思っています。
昔からそこの気持ちは変わらない。こと自転車に向き合うときは、2018年も今も変わらず負けず嫌いでいます。
リオ2016オリンピックまでは、大学の頃に書いていた計画ノートがありました。
ですがリオ以降には、このノートは書いていません。これがあれば、もっとよかったかもしれません。
ただ、計画ノートに近しい事は、習慣化できる様になってきたとも感じています。
結果を出すために何を優先して取り組むか、だれが強くなったらチームパシュートが強くなるかなどを、日々刷新しながら即座に組み立てています。
まだまだ未熟ですが、僕は今、本能で生きていると思います。
いつも思います、なんで僕は自転車選手やってるのかなって。
でも競輪選手になったことで選手寿命が伸びて、目の前の結果で、どうこうなるような感じはなりなくなりました。
どうなんだろうなぁ、自転車競技選手のロールモデルとして、僕とか英也とかっていうのは、成立するんでしょうかね?
(2023全日本選手権トラック)
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