【2023世界選トラックがんばれ】長迫吉拓インタビュー『レースの1分前、めちゃくちゃいい緊張が来るんです』

【2023世界選トラックがんばれ】長迫吉拓インタビュー『レースの1分前、めちゃくちゃいい緊張が来るんです』

2023年からチームブリヂストン選手となった長迫吉拓は、これまでに2度のオリンピックに出場しています。
ロンドン2012オリンピックとリオ2016オリンピック、BMXレーシングでの日本代表としての走りでした。

その長迫は今、トラック短距離種目のチームスプリント、その第一走に特化しています。
3度目のオリンピックに出場し、そして夢であるオリンピックでのメダル獲得を、今度こそ実現するためです。

その種目転向に至るまでの話は、先のチームブログ・インタビューにて詳しく聞いています。ぜひご参照ください。
>>【長迫吉拓インタビュー】来年のパリ2024が「最後のオリンピック」

長迫は、インタビューするたびに、とても深いことを語ってくれます。
それはオリンピックに2度出場した、スポーツの圧倒的な国内頂点に立ったことのあるものが持つ言葉なのでしょう。

今回も、簡潔な質問からでしたが、とても興味深い答えをもらえました。
チームブリヂストンとして、短距離のチーム種目を走ることの意義。
世界選手権を前にした、チームスプリント一走としての一番辛い時。

そして今年に入りしてから変わったという、
辛いトレーニングやあらゆる緊張からの気持ち全てが昇華される、特別な瞬間についての話です。



(脇本、長迫/2023全日本選手権)
ーーこれまでBMXという個人競技で2度のオリンピックに出場してきた長迫選手、現在取り組んでいるチームスプリントというチーム競技に対してどういう想いでいますか?

チームというのが大事な要素です。チームスプリントはBMXと違って個人種目ではないので、チーム感をかなり意識するようになりました。
 
ーーチーム感、というのは具体的にどういう感覚ですか? 


たとえば自分の気持ちが落ちてる時とか、そういう時でも人に助けてもらえるし、逆に自分が助けてあげる立場でもあります。

チームが同じ目標を持っている限り、自分が下がってる時とか、その誰かが引き上げてくれるんです。
一緒にやってる以上、自分以上にチームに迷惑をかけたくない、という気持ちがあります。自分がおろそかにしてしまうことで、他に迷惑をかけてしまうとか、結果として、それはレースの日に通じてしまう。

自分を言い訳に負けたくないから、がんばれる。ひとりの力は限られていますが、チームスプリントでは、3人いるからこそ、3.5人分の力が出せる。そういうことを感じています。


ーーではチームスプリントに『チームブリヂストンの一員として』挑むことを、長迫選手はどう感じていますか?


チームスプリントがある日は、だいたいチームパシュートもあり、 その時、チームパシュートは一時間ぐらい早めに予選のレースがあります。

この時、中距離チームがすごくがんばって、予選で結構いいタイムを出してくる、今までのレベルを急に超えてくる。
日本新記録を出す。そういう刺激的なタイムを目の前で見ると、僕にも刺激が入ります。次は自分たちだ、っていう、いい意味でのプレッシャーが入ります。

それで、言い方は変かもしれませんが、「負けたくない」と感じます。後押しされている感じがあります。

だから、僕はチームスプリントを走っていますが、チームブリヂストンの一員として、互いに刺激し合っていると感じています。


ーー今年1月のチーム入りからこれまで、長迫選手自身の走りとしてはどのような進歩・進展があったと感じていますか?


BMXの時からエリートで走ってきて10年ちょっとになり、ここのところ「極度の緊張感が楽しくなってきた」という感じがします。

もちろん緊張します。レースの前日の晩、レースの朝、緊張がいっぱいで朝食も食べづらいほど、でもお腹いっぱい食べなきゃいけない。
会場に着くまでのバスは、かなり緊張します。逃げ出したくなるぐらいの緊張です。

レースが近づくにつれ、ウォームアップしたり、ちょっとずつレースが近くなって緊張感もどんどん上がってきます。

感覚的に、なんだか、常に誰かに頭をコテンパンに殴られて、
「集中しなさい。集中しなさい」って言われているような感じです。
それこそ、それは今から始まっています。

本当にタイムが出るのかっていう不安。不安な自分が投げかけてくる、ネガティブな要素です。

でも自分は、一つのことに集中している。
自分の中では「できる、絶対できる」と思っている。
その頭の中のパンチと自問自答、そのせめぎ合いが、常にしんどいです。

ですが、レース前、自分の順番を待っている時。
次が自分のレースだ、というあたりから
「あのきつい練習は、このためにやってきたんだ」とポジティブに捉えられるようになりました。


(2023全日本選手権)

それで、スタートラインに立った時、
「ああ、これなんだなあ」という感覚に包まれます。

それが、なんだか、すごく楽しい。
そういう感じに、やっと思えてきた。 
これは今まであんまり感じられなかったものでした。

それまでの緊張は、逃げ出したくなるぐらいの緊張感で、
それがレース前の1分前に、めちゃくちゃいいやつに変わって、やって来る感じです。

スタートラインに並ぶときは、もうその世界にいます。本当に周りの声は聞こえない。
この緊張感を「楽しい」と思えるのは、本当にこの時間だけです。

それが今年、チームブリヂストンに入って変わった、と思うところです。
緊張感が増せば増すほど、最終的に楽しくなってくるような感じを受けていますね。 


(2023全日本選手権)

ーーこれまで獲得してきたネイションズカップでのメダルや表彰台。これらは、世界選手権に向けての自信となりますか? それともプレッシャーですか?

 
今シーズンは、成長を結果に見られている段階で、僕の中では自信になっています。

これまでも、ある程度ポテンシャルは持っていましたが、なかなか結果として現れず、ちょっと足踏みをしていた感じでした。

今年のネーションズカップ第1戦で4位だった時は、ひたむきに、下向いて、とにかくがんばってがんばって、終わった時にふっと目を上げたら、あ、自分たちはここにいたんだ、みたいな感覚でした。

ネイションズカップ第2戦では3位で銅メダルを獲れて、今は自分達の世界の中での位置が、ある程度明確にわかりましたし、タイムも安定してきた。

世界選手権では、自分たちも周りの方も、チームスプリントでメダルが獲れるという期待値がかなりあるので、もう一回、自分たちで、行けるとこまで行く、みたいな感じで捉えています。


(長迫、新山、脇本/2023全日本選手権)

ただ相手である、1位、2位のオランダとオーストラリアは一つ上のレベルにいると思うので、ちょっと厳しいかもしれませんが、日本を含めてイギリス、フランス、中国が、3位ねらいになると思います。
僕たちがネイションズカップで銅メダル獲ってるからイケる、という甘い考えは全くありません。

チームスプリントでの一走は、レースとしては、すぐに終わってしまいます。 
でも、その一走の、1周目のタイムっていうのはみんな注目するところです。
全体の最終フィニッシュタイムの次に注目されるのは、一走のタイムなんです。 

一走として、今の自分の最高タイムは17秒456です。目標タイムは、17秒2〜17秒3です。
そこに来ればやっと、世界に肩を並べるぐらいだと思っていますね。


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