INTERVIEW
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EXTENZAが
切り拓いた、
数値に表れない
感覚の世界。
ときに、わずか数センチのライン取りが勝負を分けるロードレース。
路面の微かなギャップを感じ取り、思い描く最速のラインを駆け抜ける。
その瞬間において特に重要な役割を果たすのが、唯一路面と接しているタイヤだ。そんなタイヤは、
ここ数年で大きく変化した。タイヤ幅は23Cから25C・28Cへ。チューブラーからチューブレスへ。
前作から時を経て、満を持してリニューアルされたEXTENZAはいかにして生まれたのか。裏側に迫る。
プロレースへの
実戦投入を前提に開発
「ディスクブレーキを筆頭に、ロードバイクは車体もタイヤも細分化が加速。
そのトレンドも、ここ2、3年でようやく安定してきた」と語るのは、歴代のEXTENZAシリーズを開発してきた高橋寛彰。
ロードバイクそのものが大きな転換期を迎えている昨今、次世代のR1Xには、アンカーが誇る
フラッグシップロードバイク「RP9」と同様に、進むべき方向をしっかりと見極めた堅実な進化が求められていた。
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23Cで180gという軽さを誇った旧R1Xの時代は、まだまだチューブラーが主流。
一部レースには投入されていましたが、決戦向きの軽量タイヤという
キャラクターでした。
一方、時代と共にクリンチャー(チューブレス)に
置き換わった現在、新しいR1Xは、プロ選手がレースで戦えるタイヤとして、
本格的な実戦投入を前提に開発してきました。(高橋)
乗り手の感覚を重視した、
“もっと倒せる”タイヤへ
では、プロ選手はタイヤに何を求めるのか。
新R1Xのテストをしてきたチームブリヂストンサイクリングの河野翔輝選手は、
“もっと倒せる”という安心感だと断言する。
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ディスクブレーキ化、タイヤのワイド化と共に、
レースの世界はより高速化しています。それに伴ってコーナーを曲がるスピードも
速くなっていきますから、そこに食いついていけるタイヤでなければいけません。
晴れの日も雨の日も変わらないフィーリングで走れることが理想です。(河野選手)
特に日本のレースではテクニカルなコーナーも多いため、
転がりの軽さを多少犠牲にしてでも、思い切って倒していける
安心感(=グリップ力)を重視しているという。
新R1Xには、
そうしたプロ目線のニーズが色濃く反映されている。
タイヤの性能は、ある程度数字で評価ができますから、
試作の段階でかなり追い込んだ開発が可能です。
しかし、客観的で分かりやすい数字と、プロが求める本当の性能は、必ずしも
一致するとは限りません。そのバランスをどう取るかが開発の肝となります(高橋)
数値と選手の感覚から
導き出した答え
そこで開発チームは、乗り手の感覚をタイヤにフィードバックするため、同一条件でのブラインドテストを重ねてきた。
ドライ/ウェットに関わらず様々な条件下で集中的に乗り込み、改善点を洗い出す。
そこで大きな転機となったのが、
“トレッド幅を拡げてほしい”という選手からのフィードバックだった。
テスト後のタイヤをチェックすると、確かにトレッド幅いっぱいまで倒し込まれており、幅に余裕がないことが伺えた。
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高橋は「正直、試作としてはかなり良いところまで行っていると思っていたのですけどね……」と
悔しそうな顔で当時を振り返る。というのも、トレッド幅が変われば、重量や転がり抵抗にネガティブな影響があることは明白。
ひとつひとつの性能がトレードオフの関係にあるタイヤにおいて、最適なバランスをもう一度見つけ出すのは
並大抵の作業ではない。しかし、それを突き詰めたことで、新R1Xは1歩2歩先を行くレーシングタイヤとして生まれ変わった。
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もう一人のテストライダーであり、EXTENZAシリーズでは
初代から重要なポジションを担ってきた飯島誠は語る。
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良い自転車はペダルを踏んだ瞬間に分かるように、
良いタイヤも走り出した瞬間に分かるもの。
2〜3%程度の緩い登りが続くコースでは、漕ぎの軽さを感じました。
また、特筆すべきなのがトレッド面の耐久性。合計4,000km以上走行した
テストタイヤを見て、傷の少なさに驚かされましたね。
前作のような決戦用に特化したタイヤではなく、
普段の練習からレースまで、この1本で十分に走れます。(飯島)
一方、河野選手はウェットのグリップ性能を高く評価する。
僕はコーナーを攻めるのが苦手な方でして、雨の中だと恐怖心から
攻めた走りができなくなります。
しかし、新しいR1Xは安定感がかなり増していて、
挙動が急激に変わるようなことが本当に少ない。
晴れの日と同じように
余裕をもってコーナーを曲がれる感覚がありました。(河野選手)
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そうしたスペックに表れない感覚こそが、新しいR1Xが切り拓いた世界。
先入観なくテストをし、忖度なく評価をする。その繰り返しによってより良い製品を作り上げていくことは、
ブリヂストンサイクルの矜恃でもある。
スペック以上の価値がある、血の通ったレーシングタイヤ、新R1Xがここに完成した。
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